--年--月--日 --:--

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

はるちはSS書きました

2012年05月21日 21:35

お久し振りです。小六です。
最近はノートにSSを書いて、テキスト化しているのですが、結構いいですね。
そんなわけで、はるちはSSです。途中まで。

以下、SSとなります。

 平日にも関わらず、空港は人でごった返していた。
 なにせ2年半越しの再開だ。千早ちゃんのことは時折ニュースや雑誌で見聞きしていたけれど、
 面と向かって話すのは久し振りである。
 受付の案内板が回る。まもなくして、乗降口からたくさんの人達がぞろぞろと現れ始めた。

 千早ちゃんが帰ってくる。
 成田に着くのは朝になるそうだ。仕事の帰り際、プロデューサーさんは私にそう教えてくれた。

「迎えに行きたいか?」

 意地の悪い顔で私に尋ねてくる。そりゃ、行きたいに決まってるじゃないですか。
 私は眉間をひそめ、プロデューサーさんをにらみつける。
 だんまりむっつりの私を見て、プロデューサーさんはハハハと笑い、私の頭をなでた。

「いいよ。その日はオフにしよう。最近は働きづめだったもんな」

 千早と一緒にお土産話でもして、リフレッシュしてこい。それが一週間前の話。

 私はプロデューサーさんから受け取ったメモを確認した。JL7015、ボーイング777。
 予定通りなら、千早ちゃんは今ここに歩いていきているはずだ。会えなかったらどうしよう。
 よく似た背丈の人が通り過ぎるたび、千早ちゃんじゃないかとどきりとして、気が気でない。
 必死に千早ちゃんの姿を探していると、後ろから遠慮がちに肩を叩かれた。

「久し振り、春香」

 もしかしたら、と思って振り向くと、そこに千早ちゃんがいた。
 足踏みをしていた思考が急に動き出すと、大切なことをすっかり忘れていた。
 こういう時、何を話したらいいんだっけ?
 私は間の抜けた顔をして、目の前の彼女の姿を見つめることしかできなかった。

 ※ ※ ※

 まったく、人違いだと思ったじゃない。
 滞在先のホテルに向かうタクシーの中、千早ちゃんは何度もさっきのことを話に上げては私をからかった。
 だって、久し振りなんだもん。2年半ぶりだよ、仕方ないじゃない。
 そう言い返そうと口を開いたら、千早ちゃんが目を細めて笑った。

「髪、伸びたわね」

 私を見る瞳の温度が優しすぎて、「ああ、うん」と私は生返事をするしかなかった。

「千早ちゃんは、髪切ったんだよね」
「ええ。初めのうちは首のあたりが気持ち悪かったけれど、慣れたら楽なものね」

 千早ちゃんは短くなった髪を手にとり、しばらく眺めた後、髪から手を離した。
 久し振りにあった千早ちゃんは、少し垢ぬけた印象を受けた。
 前からジャケットが似合うなぁとは思っていたけれど、今はさらに輪をかけて似合っている感じがした。
 仕立のいい生地。無理のない、だけどスタイルがきれいに映るすらりとした服の形。
 腰のラインはしなやかな曲線を縁取り、ぱっと見ただけでも高そうな服だった。

「仕事はどんな感じ?」
「そうね」千早ちゃんは口に指を添え、「目新しいことばかりよ」

 考え方についてもそう、もちろん音楽のこともね。この間あった出来事を話す千早ちゃんの口元は楽しそうだった。
 なんか英語しゃべってみてよと冗談半分に言ってみると、流暢な英語を話してくれた。
 その聞き慣れない言葉の匂いに、ちょっと寂しさを覚えた。

「千早ちゃんはすごいね」
「春香だってすごいじゃない」知ってるわよ、と千早ちゃんは目を細める。「すっかり有名人じゃない」
「千早ちゃんほどじゃないよ」

 少なくとも私には、勉強のために渡米するほどの情熱を持っていないし、そこで何かをつかみ取れるという自信もない。
 私達は二人して、いくつかの空笑いと常套句をぎこちない雰囲気に浮かべていった。
 千早ちゃんがいなくて寂しかったよ、とか。海外の生活は大変だった?とか
 話したいことはたくさんあるはずなのに、何から話し出していいか分からない。

「「ねぇ」」

 思いきって出した声は、面白いくらいにきれいに重なった。そういえば、昔はこんなことがよくあったね。
 お先にどうぞ、と他人行儀な譲り合いをしていると、運転手さんに軽く咳払いをされた。

「とりあえず、何か食べない?」

 なんだかお腹空いちゃった。照れ隠しに自分の頭を軽く小突くと、千早ちゃんはそうねと頷いた。
 タクシーはちょうど見知った場所を走っていて、渡りに船と私達はそこで車を降りた。
 トランクから取り出した千早ちゃんの鞄は、思った以上に軽かったことを覚えている。


 <続きはこちら



上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。