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はるちはSS書きました

2012年06月11日 01:40

お久し振りです。小六です。
手慣らしと気分転換として、軽めで甘めのものを一つ。
いつだってガチンコ勝負ですが、次の話は腰据えて書きたいものなので。

そんなわけで、以下、SSとなります。



 遅めの朝は、心地よい温かさだった。大好きな人の肌の匂いがして、たまに風がやさしく吹いていた。
 毎日がこんな幸せで包まれていればいいのに。私は布団に顔を埋め、甘い香りを胸いっぱいに吸い込んだ。
 薄地のカーテンから洩れる光が眩しくて、頭の奥がうずうずとぐずり出す。
 もう起きないといけないなぁ。目を開けると、一番傍にいて欲しい人が私を見つめていた。

「おはよう、春香」

 ああ、私は夢を見ているんだ。最近の夢はすごいなぁ。夢を見る夢があるんだよ、そんな美希の言葉を思い出した。
 なんて素敵な夢だろう。だったらいいかな、と私は猫なで声を出して、千早ちゃんの首筋にすり寄った。
 千早ちゃんはくすぐったそうに笑って、私の頭をやさしく撫でてくれた。

 ……おはよう?

 もしかして、と私は我に返る。とくとくと拍を打つ心臓の音、確かな肌の感触、しっかりとした視界。
 微かに苦笑いされた声もちゃんと私の鼓膜を震わせて。

 ああ、もしかして、もしかしなくても。

 浮かれた頭がさっと冷え、私は瞳をこじ開けた。千早ちゃんの顔、なんと目測5センチメートル。
 思考が一瞬停止した後、どんがらがっしゃんと結論がはじき出された。

 これは、夢なんかじゃなくて――

 その結論に辿りついたが最後、眠りに落ちるまでの記憶が、ビデオの早送りみたいに私の脳裏になだれ込んできた。
 その記憶に、私はまた再び思考を停止する。

 記憶の中の私は、それが私だと信じたくないくらいに淫らな格好で肢をひらげて。
 夜の私は恥ずかしさとか節度なんてそっちのけで、千早ちゃんを求めることに必死になっていたわけで。
 やだやだと上ずった声で千早ちゃんの指をねだって。犬のように切なく喘ぎながら腰を揺らして。

 ああ、何て恥ずかしい姿を見せてしまったんだろう!
 私は低く呻いて、真っ赤に染まった顔を枕で隠した。

「……春香?」

 わけがわからないといった風に、千早ちゃんは私の名前を呼んだ。
 そりゃあ、そういう関係ですし、そういう仲になれたというのはとても嬉しいんだけど、嬉しいんだけど。
 私だって女の子で。下肢の付け根に夢を見る年頃なわけで。でもそんなことおおっぴらに言えないわけで。
 他人事のそれすらやましい期待を抱いてしまうのに、眠れぬ夜の慰めに胸が締め付けられてしまうのに。それなのに。
 それが現実のものとなってしまって、しかも当事者が私自身で、相手が一番大好きな人であったわけで。
 リアリティが想像を超えてしまったら、みんなこんな感じになっちゃうのかなぁ?

 熱くなった耳たぶはじんじんと疼く。
 お願いだから嫌いにならないで。顔に火がついてしまうって、きっとこんな気持ちだ。

「どこか具合でも悪いの?」

 千早ちゃんは私の背中にそっと手をやった。肩の骨に触れる指先はぎこちなくて、千早ちゃんらしいなって思った。
 脊髄をなぞるくすぐったさに、私は身をよじらせる。
 それはとても嬉しかったけれど、この指先に私は踊らされてしまったんだなぁって、改めて実感させられた。
 それが悔しくて恥ずかしくて、私は枕に頭を深く埋めた。

「だいじょぶ、うん。大丈夫だから」

 だから、お願いだから、時間を下さい。今のままだと、恥ずかしさやら愛しさやらで心がはちきれてしまいそうだった。
 頑なに背を向ける私に、千早ちゃんはなおも心配そうに声をかけてきて、ああもう、顔なんて向けられない。
 聞き分けのない子供みたいに駄々をこねて、私は「千早ちゃんの大好きな私」を取り繕うと必死になった。

 だけど、見られてしまったものは取り返しなんてつくはずもない。結局私は情けない呻きを返すしかできなかった。
 そのうち千早ちゃんも、私がどうして背を向けているのか察したみたいで、小笑いしながら私の身体を触り始めた。

 もうやだ。千早ちゃんの馬鹿。私はこんなにいっぱいいっぱいなのに、どうしてそんなに余裕なの。
 何故か涙目になった顔を見られないように、私は振り向きざまに千早ちゃんの顔に枕を押し付けた。

「見えないわ、春香」 千早ちゃんはちっとも困った様子じゃなくて。
「見えないようにしてるの!」 私は説得力なんてまるでない言葉を吐いた。

 千早ちゃんは肩を揺らして、私の腰に手を回した。癇癪をなだめる指先は、臀部から内腿に滑る。
 雨上がりの花を愛でる爪の動きがいじらしくて、私は甘い声を上げてしまう。
 枕を押し付ける腕の力なんて、骨抜きにされてしまうしかなかった。そうして千早ちゃんに枕を取り払われた。

 期せず、千早ちゃんと目が合う。恨みごとの一つくらい言ってやろうと、私はきっと千早ちゃんを睨んだ、
 だけど、千早ちゃんが本当に幸せそうに笑っていたものだったから、瞳を逸らすことなんてできなかった。
 おまけに額にキスをされて、「春香、かわいい」と満面の殺し文句まできたものだ。

 ああもう完敗だ。くやしい、くやしい、それ以上に、大好き。

 私は千早ちゃんの鼻先を甘噛みした。長くてきれいな髪を指先に絡めて、どうせならこの想いを満喫してやろうと思った。
 私は目をつむって、想像以上の幸せに心を震わせた。私達はうっとりと息を吐き、もう一度見つめ合う。
 千早ちゃんは私の頬に手をやって、濡れた軌跡を愛おしそうに確かめて、満足そうに口元を緩めた。

「おはよう、春香」
「……うん、おはよう。千早ちゃん」

 顔は未だに熱が冷めないままで、千早ちゃんに耳元でそれをからかわれた。
 違う違うとしばらくじゃれあっていると、ぐぅぅ、とお腹の虫に怒られた。



 <了>



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