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1時間SS書きました。

2010年01月02日 20:10

お久し鰤です。小六です。
やってきました新年初の1時間m@ster。
お題は「初夢」となります。初夢ですよっ!初夢!!

それでは、以下SSとなります。



 まるで太陽のように笑う少女だな、と思った。
 その少女はステージで踊り、歌い、観客の声をまっすぐに受け止めていた。
 踊りも歌もどこか危なっかしくて、見ていられない。だけど、逆に彼女から目が離せなくて。気付けば彼女に釘付けだった。




  ―――― 僕と君との初めての夢 ――――




   そこはそうじゃない。こう踊るんだ


 胸の奥から湧き上がるもどかしい気持ち。気付けば自分はステージ袖に移動していた。
 一体何が起こったのだろうと思案していると、緑色の事務服を着た女性が嬉しそうな表情をして自分に話しかけた。


   やっぱり大好きですか?


 やっぱりもへったくれもない。自分がステージに立つ少女と出会ったのはこれが初めてなのだ。自分は隣の女性の問い掛けに対し、適当に相槌を打った。

 ああ、また転びそうになっているじゃないか。
 ダンスが苦手なのか、それとも日常的に転んでしまう体質なのか。自分の視線がずっと彼女に向けられていたことに気付く。
 舞台袖のスタッフの様子が少しざわつき始める。何かあったのだろうか。スポットライトの色が鮮やかに切り替わるのを眺めながらそう思った。隣にいた事務員らしき女性もスタッフに呼ばれて自分の下から去っていく。
 どうしてこんなところにいるのだろう。そうはいうものの、結局何もすることができない自分は、ただ心の赴くままにステージを見つめることしかできなかった。
 もうすぐサビが終わることを直感的に把握する。楽しい歌だ、彼女のために作られた歌のようにも聞こえる。
 観客の熱気と彼女の情熱が渾然となって、まるでステージの上が蜃気楼で揺れているようだった。



 たらりと汗が頬を伝ってゆくのを感じたその時、ステージの照明が落ちた。

 暗闇に包まれる場内。突然の出来事に観客がどよめく。自分もそれに違わず、ぐらりと心が傾いでゆくのを感じた。舞台袖がパニックになる様子が素人目からもよく分かる。罵声と絶望の声が銃弾のように行き交う。彼女はどうしているのだろうか。
 真っ暗闇のステージの上、彼女はたった一人きりのはずだ。ぐっと目を凝らしてステージの様子を伺った。
 目がようやく暗闇に慣れてきた頃、彼女の姿が目に入った。
 彼女は暗闇の中、毅然と立ち続けていた。まるでステージは終わっていないと主張するかのように。
 どうしてそこまでステージに拘るのか。まだ幼さが残る少女の中に、確固とした信念を見つけて、思わず声を出した。がんばれ、と。俺はまだお前を見続けているよ、と。しかしその声は観客の声に流されてしまう。
 どうすれば彼女に声が届くのだろうか。もっともっと喉が枯れる位に声を張り上げればいいのだろうか。そう思った瞬間である。
 
 彼女と目が逢った。

 彼女は自分の姿を見て、太陽のように笑った。私はまだまだ歌えます、信じて下さい。そう言わんばかりの笑顔だった。


 事務服の女性が自分のもとに戻ってくる。大丈夫ですか?これからどうしたらいいんでしょうか。そう自分に尋ねかけた。
 もう一度ステージの上にいる彼女を見る。彼女は自分をじっと見つめ続けているような気がした。


「大丈夫です。歌えます」


 自分は彼女に向かって頷いた。暗闇で見えないかもしれないのに、絶対に伝わると理由もない自信があった。
 動きが見えたのだろうか。彼女はすっと息を吸い、再びメロディを歌いだした。歌が終わりに近づく頃には照明が復活し、あたかもそれが演出であったような感じさえ覚えた。
 そういえば、と思い返す。彼女の歌は危なっかしくて見ていられないけれど、とても魅力的なことを。まるでステージの神様に愛された少女だ。

 観客の声援が鳴り響く。彼女はそれに向かって全力で応える。

 ふいに彼女と再び目が逢う。彼女はしてやったりという顔をして自分に微笑んだ、気がした。









    目覚まし時計のアラームがこれでもかという位に鳴り響く


 手さぐりでアラームのスイッチを叩き、自分はぼんやりと部屋を眺めた。殺風景な部屋、とても煌びやかなステージだとは思えない。そうして初めて自分は、先程までの光景が夢であったことに気付く。

 不思議な夢だ。まだ話したこともない少女と目だけで会話ができるなんて。
 目覚めのコーヒーを飲みほして、スーツをはおる。
 今日から新しい職場だ。どんな職場だろうと思いを馳せながら自分は部屋を後にした。

 新しい職場は都内の裏通りにひっそりとたたずむ芸能事務所。本当に大丈夫なのだろうかと自分の将来に若干の不安を寄せながら、ドアノブに手をかけた。古くなったテーブル。窓ガラスに貼られたガムテープ。数世代前の電話機は、がちゃがちゃとファックスが無骨に動いていた。


「あの…新しいプロデューサーさんですか?」

 声がした方を向くと、夢であった彼女とそっくりの少女がいた。

「君は…運命の出会いってやつを、信じる?」
















 
   おしまい。


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