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1時間SS書きました

2010年05月07日 22:57

お久しぶりです。小六です。
というわけで、1時間SS書きました。

【お題】「緑」「アメ」「ステップ」「グラス」
今回は「ステップ」を使用させて頂きました。

※注
ステップ:中央アジアのチェルノーゼム帯など世界各地に分布する草原。ロシア語で「平らな乾燥した土地」の意味。(wikipediaより)

【追記】 なんと!あのラディカルエクセレントクオリティドラマティックレーザースピードエキサイティングノベルスターの晴嵐改様から挿絵を頂きました!
     イラストはSS中に挿絵として掲載させて頂いております。本当にいつもありがとうございます!

以下、SSとなります。


 まるで黒い砂漠を歩いているようだ。

 陽光。耳たぶが焼ける。額から汗が滲む。アブラゼミがやかましい位に鳴いていた。
 浅く息をして、私は道を歩く。もう何年も歩いた道だ。夏の空は青く、どこまでも飛んで行けそうだった。
 瞳を閉じて空の先を想う。どこまでも青。このまま溶けて魂まで飛んでいけたらいいのに。

 


   ウォーク・インザステップ・サマーデイ



 
 雑草だらけの砂利道を歩き、私は彼と再会する。丁寧に磨かれた大理石は眩しく輝いていた。
 鞄から缶を取り出し、彼が好きだったコップにジュースを注ぐ。メロンソーダと切り子のグラス。彼のお気に入り。
 いつまで経っても子供な彼は、それを宝物であるかのように楽しんでいたのを私は知っている。
 一通り挨拶を済ませてから、マッチを擦る。この場所にふさわしい匂いがした。彼と別れたときと同じ匂いだ。

 まるで私が知っている世界とは別の世界に迷い込んだような錯覚を覚える。私は瞳を閉じた。
 風が消える。遠くに立った木々のざわめきが止まる。セミが話を合わせたように静かになった。


  怖いくらいに静かだった

 
 彼はずっとこんな世界の中で生き続けているのだろうか。光の音が聞こえてくるような、そんな鎮けさ。
 もし私の声が聞きたいのなら、いつでも聞かせてあげるのに。
 そう思ったけれど、ここがあまりにも静かだったから、声を忘れた。声を出してはいけないような気がした。
 黒い砂漠を想う。手で触れることのできない位の熱を持ったアスファルト。彼はどこにいるのだろう。
 手を合わせて神に祈る。ふわり香の匂いがした。

 せめて、今日だけは、ここにいてくれますように。
 緑に囲まれて、彼の好きなものがあって、誰の喧騒にも苛まれないこの場所に。私がいるこの場所に。

 焼けるような陽光が肌を刺す。私は瞳を開けた。


 道の先、蜃気楼。
 目の前には弟の姿
 


97458533.png



 私は息を飲んだ。彼の顔はぼんやりとしか見えなかったけれど、笑っていた。
 その名を呼んで、手を伸ばす。

 だけど、その幻のような影は、幻のように溶けてなくなってしまった。

 ジイジイとセミが鳴き、生温い風が吹き、木々がまた井戸端会議を始める。
 まるで砂漠のようだ。しばらくの間、私は消えてしまった幻の跡をぼんやりと見つめていた。

 子供の彼にとってこれは、ずっと続くかくれんぼのようなものなのだろう。
 また私と逢って、遊んでくれるだろうか。
 だとしたら、嬉しい。


 私は立ちあがり、蜃気楼のあった場所を通りすぎる。
 一歩、また一歩、その場所から通りすぎる。
 一歩、そしてまた一歩、私は私の世界へ向かった。


 ある夏の、私と彼の、幻のような思い出。






 <了>


コメント

  1. トリスケリオン | URL | UzUN//t6

    きっと

    千早が望む限り……「彼」はまた現れてくれると思う
    だけどいつかは、「彼」と会う必要がなくなる日もくるんでしょうね
    その時、彼は笑ってお別れできるんだろうなぁと

  2. 小六 | URL | -

    コメントありがとうございます!

    コメントありがとうございます。小六です。1時間SSには久し振りに参加したのですが、カンが鈍っていたのか、少し短めになってしまいました。要練習、要参加ですね。

    ≫トリスケリオン様

    >千早が望む限り……「彼」はまた現れてくれると思う

     実はこのSS、最後の辺りがどうしても気に入らなくて、若干修正しております。こういうものの類に出くわしたことのないので、また千早さんの前に「彼」が現れてくれるかどうかは分かりませんが、会えるのではないでしょうか。千早さん曰く、「かくれんぼ」みたいなものなのでしょうから。


    >だけどいつかは、「彼」と会う必要がなくなる日もくるんでしょうね
    >その時、彼は笑ってお別れできるんだろうなぁと

     会う必要がなくなるというのは、どちらの解釈にしても彼女にとって何らかの結論が出た時なのかもしれないと僕は考えています。どちらにしろ、静かな世界なのでしょうね。
     笑ってお別れ、ができないにしても、意地でも繋ぎとめておこうとして地団太を踏むことはなくなるんでしょうね。早熟の歌姫は精神年齢も早熟なのかもしれません。だからこそガラスみたいな危うさをもった女の子だと思います、千早さんって。それがまた魅力的に感じてしまうあたり、僕の変態さが伺われますね。こんにちは、変態という名の愚民です。


    お読み頂き本当にありがとうございました!

  3. ガルシアP | URL | MhlNZB0o

    重い想い。

    人の死に纏わるあれこれは軽々に論じてはいけないのだろうけれど、
    再び彼に、こういった形で逢えることが本当に幸せなのかどうか悩んでしまう。
    捕われて、囚われている。多分、そういう事なので。
    死ぬという事は、その人がどこにもいなくなる事。
    死を受け入れ、乗り越えるという事は、その人が常に隣に在るという事。
    その狭間なのかな、という印象。
    本編の中で千早は、弟が「ここ」にいると墓地へプロデューサーを連れて行き、
    「あの子に届くでしょうか」と海の向こう、空の彼方まで歌声を響かせようとします。
    悩み、迷い、自分なりの解釈をしようとする千早にとって、
    やはり弟も、歌と同じだけ愛を傾ける対象なんだなあ、なんて事を考えてしまった昼下がり。
    たまに、こういうバシッと短い作品も面白いのではないでしょうか。ええ。

  4. 小六 | URL | -

    コメントありがとうございます!

    コメントありがとうございます。小六です。一本でも人参、1時間といってもSS、いつだって真剣青春ロックソウルをかけてぶつかっております。\ぼかーん!/

    ≫ガルシアP様

    >人の死に纏わるあれこれは軽々に論じてはいけないのだろうけれど、
    >再び彼に、こういった形で逢えることが本当に幸せなのかどうか悩んでしまう。
    >捕われて、囚われている。多分、そういう事なので。

     死生観や幸せの定義は本当に人それぞれで、僕は色んな定義があっていいと思います。その人自身も昔確立した定義が移り変わるということもありますし、その辺りについて是非を切る程の経験も知識も僕には足りません。未だ解なしというのが現在の僕の答えです。それこそ死ぬまでずっと考え続ける類のものなんでしょうね。


    >死ぬという事は、その人がどこにもいなくなる事。
    >死を受け入れ、乗り越えるという事は、その人が常に隣に在るという事。
    >その狭間なのかな、という印象。

     お題を見て、何がいいかなーとステップを調べていたら、ステップ気候に行きあたりました。乾燥した土地からアスファルトが浮かび、蜃気楼が浮かび、「彼岸」というモチーフが決まり、こんなSSとなった次第です。身近なはずなのにどこか人離れしていて。彼岸って不思議な世界だと思います。『解夏』や『納棺夫日記』みたいな、そんな世界観。静かに、だけど確実に近寄ってくる無光へ至る過程。相変わらずぼんやりとしたものをモチーフにしたがる癖が治りません。


    >本編の中で千早は、弟が「ここ」にいると墓地へプロデューサーを連れて行き、
    >「あの子に届くでしょうか」と海の向こう、空の彼方まで歌声を響かせようとします。
    >悩み、迷い、自分なりの解釈をしようとする千早にとって、
    >やはり弟も、歌と同じだけ愛を傾ける対象なんだなあ、なんて事を考えてしまった昼下がり。

     最近よく妄想することがあります。千早さんは本当に歌が好きなのかな、と。おそらく好きなのでしょうけれど、15歳の少女があれほどまでに歌に執着するのは、歌しか拠り所がないという理由以外に、弟と歌とを倒錯して自分の引出しに容れているからかもしれない、と。「歌を歌い続けること=弟を忘れないこと=弟を愛していたと自分自身に証明すること」と捉えてはいないだろうか、と。
     高ランク時の千早さんはその辺りを上手く切り離せているとは思うのですが、弟がいない、もしくは弟が生きていた場合、千早さんはどんな少女になったのかな、と考えることがあります。今回のSSは、そんな変態の妄想の産物でもありました。


    >たまに、こういうバシッと短い作品も面白いのではないでしょうか。ええ。

     短くなったのは私用のためというのが大きいのですが、こういう感じで台詞無しで書くというのもなかなか面白かったです。相変わらずモチーフとおどおどしながら真正面から向かったものしか書けないのですが、読んで何かを感じて頂けたのでしたら、これほど嬉しいことはありません。


    お読み頂き本当にありがとうございました!

  5. 小六 | URL | -

    拍手ありがとうございます!!

    返答が遅れて申し訳ございませんでした!小六です。皆様からのコメントや拍手は本当に活力になります!マイナー路線をひた走るSSばかりですが、これからものそのそと書き続けていこうと思っております!

    というわけで、拍手返信です。

    ≫nakana様

     ふおお!!お読み頂きありがとうございます!!基本的にこういう「あるかないか分からない」みたいな曖昧なものが好きです。オカルトは怖くてお化け屋敷にすら行けません。
     「なんかいい」というのは本当に嬉しい言葉だったりします。よく分からないけれど、静かに心の琴線が震えるといいますか、音叉の共振みたいな感じといいますか、SS書きなのに上手く文字で言い表せないのですが、びぃーんと震える音みたいな雰囲気が出せたらいいなぁと思って書いてみました。そういう雰囲気が上手く言葉で表せないので、逆にSSという形で文字にしているみたいなところはあります。言葉にできないものを言葉にするというのも、何だか不思議な感じですけどw ですが、こういう挑戦は大好きなので、気が向いたらよく似た感じの雰囲気をきちんと書いてみたいですね。

     お読み頂き本当にありがとうございました!

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