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一枚絵で書いてみM@STER投稿SSです

2010年05月26日 01:51

お久し振りです。小六です。
一枚絵で書いてみM@STERに投稿させて頂いたSSです。

以下、SSとなります。
 

 それは幻を現にする魔法の時間



「私のことが好きなら」

 身体の重みにソファが軋む。乱れた制服、無防備に晒された肌、その白さに否が応でも視線が釘付けになった。
 誘うように解かれた唇はやわらかく、赤いスカートから露わになった脚のなめらかさに目が眩みそうになる。
 まるで白昼夢だ。理性など容易く手折れてしまいそうだった。
 
「ねぇ、本当のこと。教えて?」

 掠れた声に耳小骨が歪に揺れる。私は幻を見ているのだ。そして彼女の求めるままに口を開く。
 言葉にしてしまえばたった一瞬。だけどその一瞬が怖くて仕方がない。今いる世界を確かめるように私は息を吸った。

 それは現を幻にする魔法の言葉





      Farouk






「またおいてけぼりをくらったのかい?」

 男はソファに座り、兎に話しかけた。主人がいなくなった兎ほど寂しいものはないだろう。
 男はスーツからトランプを取り出し、テーブルの真ん中に置く。どこにでもある52枚のトランプ。

 それをきっかけにして、兎は何かに憑かれたように動き出した。

「お前に言われたくはないね」
「女のいない賭博師ほどさもしいものはない?」

 全くもってその通りだ、男は自嘲した。言葉は続く。

「俺が知ってる女はみんなスカートの下にコルト銃を隠し持っているのさ」
「油断をすれば?」 兎が尋ねると、
「頭蓋をズバン!」 男は笑う。
「魅惑的で強欲なカラミティ・ジェーンばかり」

 金も女も地位も名声も何もかもが賭けられるポーカーゲーム。
 まるで儀式のように男と兎はカードを二枚引き、一枚を伏せる。

 テーブルの上から見えるのは、ダイヤのキングとクラブのエース。

「こりゃ幸先がいい」

 ひゅうと口笛をふいた男は、右手で銃を作り兎を撃った。
 男はカップラーメンをテーブルから取り、嬉しそうに眺める。
 兎は何も答えず、トランプの山に手を伸ばした。




  ―――― Colt 4 Alice Ivers ――――






 ぐずった赤ちゃんが驚いて泣きやんだみたいな、そんなあやふやな曇り空。
 雑居ビルの屋上で、私とデコちゃんはもくもく昼食を食べていた。

「デコちゃんって、デザートは最後に食べる方でしょ」

 家で作ってきたおにぎり食べ終えた私は、ハトにお菓子を上げながら話を切り出した。

「突然何よ」
「デザートなんてお店に来ればいつでも食べられるのに、意外と貧乏性だよね」

 バゲットサンドを食べようとしていたデコちゃんは大きくため息をつき、うろんげな目つきで私を睨みつける。
 そんな怒りっぽいと自慢のおデコにシワよっちゃうよ?
 ……流石にそれを言うと会話が続かないので、私はデコちゃんの隣ににじり寄った。

「そんなんだから尻軽って言われるのよ」
「重いお尻なんて、まっぴらゴメンなの」

 それに頭で考えたことよりも実際に触れて感じたことの方がよっぽど意味があるよ。反抗的に舌を見せた。
 私の反応を見てデコちゃんは眉をひそめる。ホント、千早さんとはまた別の意味で頑固。まるで風紀の先生みたい。
 何か息苦しくなった私はネクタイを少し緩め、ため息を曇天に吐いた。いつもホンネは言わずにタテマエばかり。
 だけどね、それじゃミキに勝てないよ?

「ねぇ、デコちゃん」
「だから何?」

「あの魔法、効果テキメンだね」

 デコちゃんは私のネクタイを掴み、カレシの二股を知った一号さんみたいな顔で力いっぱい私を引き寄せた。
 上手くイき過ぎてに思わず口元が緩んでしまう。予想外だったのかな。撃った弾丸は、予想通りの的にキマったわけだけど。
 駆け引きなんてヤッたことないんでしょ?タテマエの知識じゃホンネの経験に勝てないんだから。

「アンタ……何に使ったの」
「千早さんに『美希が春香に見えますように』って」
「それで?」
「意外とテクニシャンだよ」

 二の言葉を紡ごうとしたら、フルスイングの平手打ちを貰った。上半身が軽くのけ反る。
 デコちゃんの指先は震えていて、顔が合成着色料みたいに真っ赤になっていた。

「なんでそんなことに使ったのよ!」
「なんで?ミキの勝手にしちゃダメなの?」

 どうせミキの気持ちなんてデコちゃんには分からない。じんじん痛む頬をさすりながら、私は笑った。
 誰もミキに本当のことを教えてくれない。みんながみんなポーカーフェイス。
 千早さんはダンマリを決め込んで、春香はそんなこと知らないの一点張り。
 ちゃんと教えてくれそうなのは、デコちゃん位だったのに。



    突然いなくなったハニーの代わりみたいに現れた、一枚の写真とジョーカーのカード。


   『
     3分間、幻を見せてやる
     どんなものでもいい。ただし一度きりだ
     ジョーカーの前で、俺の名前を呼べ
                             』


 たったこれだけがテーブルの上に置いてあった。写真の裏に書かれた文字は、ハニーの文字。
 言葉の意味なんて全然分からなかったけれど、そのメモを見たデコちゃんと千早さんは何かを隠すように押し黙った。
 だから、これだけはミキにも分かった。これは嘘じゃないってこと。幻が本当になる魔法なんだってこと。

 別に幻なんてどうでもよかった。3分間の幻なんて、インスタントラーメン位の価値しかない。
 でもそれはハニーが消えたことと関係があるはずだから、何とかして本当のことを掴みたかった。そうすればきっとハニーに会えるから。
 千早さんは春香のことが好きで仕方ないこと位分かってる。だからきっと春香になら教えるだろうと思って魔法を使った。

 魔法は本当に幻が現実になったみたいで、今でも千早さんは私のことを春香と思っている。
 『春香』の前の千早さんは、とてもとても優しい。

    だけど、千早さんは本当のことを教えてくれなかった。




 さっきのビンタの音が響いてから、また空が静かになるまでミキ達はずっと黙っていた。
 トラックの音がぶおんと聞こえて、もういいかなと思ってデコちゃんに話しかけた。

「ねぇ、デコちゃん」
「何よ」
「ミキの幻はずっと続いてるよ」

 何度も何度も繰り返しているはずなのに、千早さんは本当にいいのか確認をしてくる。軽いキスでも。
 服を脱がすときも、肌に触れるときも、前戯をするときも、どうしてほしいのか尋ねてくる。
 好きにしていいよって答えると、千早さんは飼い主に見捨てられた仔犬のように哀しそうな顔をする。
 そういうとき、あばらの浮いてしまいそうな腰に腕を回し、首筋に痕をつけると千早さんはとても安心してくれる。
 本当に千早さんは春香のことを大切に思っているんだな、って文字通り身をもって理解した。

 デコちゃんはネクタイを掴んでいた手を緩め、苦い顔をしながら言い捨てた。 

「……言いたいことはそれだけ?」
「うん」

 多分話を聞いてほしかっただけなんだ。聞いてもらったところで何がどうなるってわけでもないけれど。
 魔法を使うのはミキの勝手だし、デコちゃんの勝手でもある。
 ぼんやり空を眺める彼女は私と顔を合わせてもくれやしない。彼女はスカートの裾についていたパン屑を払い、立ち上がった。

「後でゆっくり話しましょう。今話すとまたアンタを叩きそうだから」
「分かったの」

 昼食の入っていた紙袋を私に押し付けて、デコちゃんは屋上を後にした。去り際を見送った私は膝を抱え込んで床を見つめる。
 どうせならこの馬鹿!ゆとり!能天気毛虫!そんな感じで怒ってほしかったのに。
 ここで魔法を使えばいいのかな。試しにハニーの名前を呟いてみたけれど、デコちゃんは戻ってきてくれなかった。

 『春香』の前の千早さんは、とてもとても優しい。千早さんの視線は私のものなんだって思うと、本当に嬉しくなる。

 細くて折れてしまいそうな腕の中、真夜中の黒猫みたいな瞳で肌に触れる手は震えていて、指先はいつも冷たい。
 何か怖いことでもあるのと訊くと、千早さんは「大切なものを壊しているから」と答えた。泣かないで過ごせた夜なんてなかった。
 たぶんミキからすれば、きっとそれは千早さんが優しすぎるからで。もうちょっとワガママになってもいいのにって思う。
 綺麗な髪の毛も、切れ長の目も、整った首筋も、細い手首も、透明すぎる心も、全部素敵なのに。怖くなんてないのに。

 だけど、千早さんが見ているのはミキじゃなくて『春香』。千早さんの世界ではミキは幻。
 だから、泣いている千早さんにどんな言葉をかけたらいいか、春香じゃないミキには分からない。

 それは甘い夢のようで、覚めることがない悪夢なんじゃないかなって、最近思う。

「……さみしいよ」

 ぽつり、ぽつりと静かに降ってきた雨が服を濡らしていく。
 山の向こうからトランペットの音。その音に驚いたハトはどこかに飛んで行ってしまった。










 男は三枚目のカードを引いた。ハートの8。向かいのカードはダイヤの10。
 兎の勝ち。男は舌打ちをして、名刺を兎に渡した。

「賭けるか?」
「もちろん」 

 男は写真をテーブルに置いた。4人の少女と男が笑っている写真。
 自分のカードをもう一度見た男は、両手を組んで唸る。

「どうした?今さら後悔してるのか」
「まさか」 男は兎の言葉を鼻で笑った。「1と8はどうも嫌いでね。一か八かの博打は好きなんだが」
「所詮、人間の目は前しか見れない」
「だからこそ人は昔を思い返すのさ」




  ―――― Deadman's Hand ――――




「聞いてよ千早ちゃん」

 昼下がりの更衣室で春香はジャージを脱ぎながら私に話しかけた。
 私といえばベンチに座って楽譜を読んでいる。もうすぐ歌うことになる曲だ。もう4度目になるだろうか。
 ざっと読み流して大きくため息を吐く。本当は4分で終わるはずの曲を無理やり3分に収めるから、歪になるのだ。

「また美希が私にセクハラしてくるんだよ。『本当はどう思ってるか教えて』って」
「素直に言えばいいじゃない」
「それはそうなんだけど……」

 レッスンで火照った顔をさらに赤くさせて、春香は口ごもった。二人とも遠慮するような間柄ではないはずだ。
 困ったようにうめき声を上げ、「言えるわけないよ」と言って春香は私に背をむける。
 その仕草を見れば、何を恥ずかしがっているのか位は分かる。おおかた身体を火照らせるような恥ずかしいことなのだろう。
 知らないことについて教えてと問われても、知らないとしか言えないだろうから、こればかりは仕方ない。

「後でプロデューサーに叱ってもらわないとね」
「プロデューサーさんもそこそこ変態だけどね」

 苦笑する春香の背中を眺めながら、私は想像する。
 身体に阻まれて見えないロッカーの中。その中にはどんな秘密が隠されているのだろう。
 友人との写真であったり、将来の抱負を書き綴ったメモや、そんなものが入っているのだろうか。
 鍵を閉めたロッカーは、通風孔越しにしか中を覗き見ることができない。

 春香は畳んだジャージを扉にひっかけ、中に仕舞っているであろう制服を探す。
 無防備な脚の上で挑発的に揺れるスカートの襞。しっとりと汗が滴る背中と肩甲骨に絡む白い紐。
 ……どうして蝶つがいは背中にあるのだろう。

 私と彼女は違う夢を見ている。ステンドグラスの影よりも薄い仮初めの現。
 一度壊してしまえば、二度と逢えない幻。

「そういえばさ」

 少し前に降りだしてきた雨が、いよいよ本降りになって窓を叩き始めていた。
 空模様からすれば、おそらく雨はすぐに止むだろう。汗に濡れた前髪をそのままに、春香は私に話しかけた。

「千早ちゃんっていつも着替えるの、私の後だよね」
「別に大した理由じゃないけれど、やりたいことがあるから」

 ふぅん、と今いち納得していないような声を出して春香は私の隣に座った。制汗剤の生温い香りが鼻をくすぐる。
 白い影に隠された柔らかい山と硬い丘陵。その内に隠された熱い肉と軟骨はどんな味がするのだろう。
 人の肉の味を覚えてしまった獣は、人を目にするとそれが淡いピンクのローストに見えるという。
 私が何を見ているのか気になったからかもしれない。春香は身体を乗り出し、私の手にあった楽譜を覗き込んだ。

「ああ、これ次のライブで歌う曲だね」

 彼女は髪を耳にかきあげ、音符を追いかけ始めた。普段は隠れて見ることのできない顎の根元。
 一つ一つを指でなぞるその姿を見つめながら、ときおり間違えている個所を指摘する。
 間違いに気づいて苦笑するその姿があまりにも無邪気で、眩しすぎて、輪郭が白く溶けてしまいそうになる。
 耳朶を裂いてその肉も皮もしゃぶりつきたい。衝動を抑えるように瞳を閉じ、黒い幻で滲んだ線を引き直した。

 人の肉の味を覚えてしまった獣は、人を目にするとそれが淡いピンクのローストに見えるという。
 ガラスの窓を割らんばかりに叩く雨音は、腹を空かせたグールが人家を襲っているような、そんな暗い音だった。 


 あらかた譜読みを終えた頃、「じゃあ先に行ってるね」と言い残して春香は更衣室を後にした。

 セーラーの襟をはためかせ、透けた白に白線がまぶしく閃く。それを見るたびに私は彼女が人間なのだと実感する。
 春香の後姿を見送った後、私は深く深く息を吐いた。
 あまり待たせてはいけない。ベンチから立ち上がって自分のロッカーの取っ手に手をかけた。

 ……どうして蝶つがいは背中にあるのだろう?
 
 そのままロッカーを開け、手早く制服に着替えた私はジャージを羽織る。 
 私にとっても春香にとっても、邯鄲の幻など心の痛みを深くするだけのものなのに。
 それならば幻まがいの現の中で夢を見続ければいい。今ある平穏をわざわざ壊す必要なんてない。
 彼女が笑ってくれるなら、それだけで私は十分なのだ。私は扉の鍵を締めて更衣室を後にした。



「遅いよー」

 廊下を歩いてエレベーターフロアに向かう途中、背後から声をかけられた。さっきまで聞いていた声。
 振り向くとそこには制服姿の春香がいた。鞄につけたぬいぐるみを揺らしながら、彼女は私に近付く。
 そこまで待たせてしまっただろうか。時計を見て、それほど時間が経っていないことを確認する。

「先に行ってるんじゃなかったの?」
「え。ああ、喉が渇いちゃって」

 にししと笑う春香は右手に持っていた紙パックを私に見せた。自販機で売っているオレンジジュース。
 レッスンの後に飲むものじゃないと思う。飲むなら水とかスポーツドリンクとか。何を飲むかなんて人の自由だけど。
 しばらくすると、目の前の扉が静かに開き、私達は鉄の箱に入った。1Fのボタンを押す。

 このまま地震が起きてしまえばいいのに。

 電光掲示板の数字を眺め、何も話すことなく扉が開くのを待った。甘い髪の匂いに心がざわついた。
 時間にすれば十数秒。それなのにどこか長く感じるのはなぜだろうか。身体にのしかかる無音の重力。
 ふいに3Fのボタンが点灯した。私は押していない。振りかえると春香が笑って私を見つめている。

「ちょっと聞きたいことがあって」

 機械仕掛けのカッコウが鳴く。扉が開いた。



   ◆ ◆ ◆ ◆ ◆



 雨空は太陽を隠し、日中といっても部屋の中は暗い。無人の応接室、私は電気をつけた。
 時折ちらつく蛍光灯の下、春香はテーブルの傍に置かれたソファに座る。そして一枚のカードを私に見せた。

「それが何?」
「美希にもらったの」
「そう」

 ポーカーフェイスを装って相槌を打つ。

「驚かないんだね」
「分かってたから」

 鍵をかけていたはずのロッカーが開いているのだから、自分以外の誰かがロッカーを開けたことは嫌でも分かる。
 ポケットから出した鍵を春香に見せる。流石に鍵をかけ直すところまでは、幼い猫にはできなかったみたいだ。
 彼女みたいにかわいい秘密はないけれど、私だってロッカーに秘密くらいは隠している。



 春香のカードだ。

 プロデューサーが消えた直後の彼女の姿は今でも鮮明に覚えている。人形のような笑顔だった。
 そして、数日のうちに春香はいなくなったプロデューサーを作り出した。蜃気楼のような幻を、魔法なしで。
 現実から一歩退いた彼女を引き戻すことなんて、目の前にある笑顔を前にしてできるわけがない。

 そうして出すのを惜しんでいるうちに、隠すことの方が正しいように思えてきて、ずっと隠し続けた。 
 それが彼女への気遣いからだったのか、自分の独占欲からなのか、その境界は曖昧で私にも分からない。
 少なくともそれは春香にとって奇跡を作りだす魔法であり、絶望に陥れる呪詛なのだ。
 
 美希だって分かっているはずなのに、どうしてこんなものを見せたのだろう。奥歯を強く噛み締める。
 ソファに座っている春香は、昔のアルバムを眺めるような目つきで一枚のジョーカーをくるくると回していた。
 膝が嗤う。気管の根元が締め付けられる。カードを弄ぶことに飽きたのか、春香はそれをテーブルに置いた。

「教えて」

 それはまるで懺悔の余地もなく断罪を受けているような。呼吸の間隔が狭まり、視界の隅が黒で塗り潰されていく。
 彼女には隠していることが多すぎて、何から説明すればいいかすら分からない。
 そもそも教えたとしても春香にとっては何のメリットもない。むしろ、それは彼女を傷つけるものでしかない。
 
 窓の外、空の黒はさらに濃さを増し、吼える風音がビル街を切り裂いていく。

 沈黙を拒否とみなしたのか、春香は目つきを鋭くし、立ち上がりざま噛みつくように私の唇を奪った。
 言葉にならぬ声をこそぎとるかのように舌は咥内を這い回り、細い意思を絡め取るように指は髪を梳き混ぜる。
 乱れた髪をそのままに、私は彼女を求めるように手を伸ばした。その手を引かれ強引にソファに倒し込まれる。

「私のことが好きだったら」

 身体の重みにソファが軋む。乱れた制服、無防備に晒された肌、その白さに否が応でも視線が釘付けになった。
 誘うように開く唇はやわらかく、赤いスカートから露わになった脚に目が眩みそうになる。
 まるで白昼夢だ。理性など容易く手折れてしまいそうだった。
 
「ねぇ。本当のこと、教えて?」

 掠れた声に耳小骨が歪に揺れる。私は幻を見ているのだ。そして彼女の求めるがままに口を開く。
 言葉にしてしまえばたった一瞬。だけどその一瞬が怖くて仕方がない。世界を確かめるように私は息を吸った。

 それは現を幻にする魔法の言葉

「プロデューサーは、」
「プロデューサーさんが、どうかしたの?」

 私の背後、応接室のドアの方から目の前の彼女と同じ声が聞こえた。
 どうして。声がした方を向くと、不思議そうな顔をした春香が美希と一緒に佇んでいた。
 昔の頃の記憶がフラッシュバックする。美希が春香になって私を誘ったのと同じ感覚。

 私は誰かの幻の中にいる。

 美希はもう魔法は使えない。
 春香は魔法自体を知らない。
 そうだとすると、    


「いつまでも引き摺ってんじゃないわよ、このバカ」

 魔法が解ける。私の目の前にいたのは、水瀬さんだった。










「スペードのジャック」
「ダイヤのエースだ」

 カードを眺めながら男は天井を仰ぐ。
 横を向いた片目の剣士。これは迷ってしまうなと男は愚痴をこぼした。

「ワンアイドジャックだろう。横にしてワイルドカードにすればいい」
「心に鎧を着たお姫様を、乱暴に押し倒す趣味はないんでね」

 ああ、だけどそういうのが趣味だったか、と下品な笑いを浮かべ、男は時計を兎に手渡す。

「全てはアイツらのお気に召すままさ」
「次は」「コールだ」

 何が賭けられるのかを問われるより先に、男は賭けに応じる。
 男は鞄から自分の日記を取りだし、テーブルの上に置いた。

「さぁ続けよう」




  ―――― One Eyed Jack ――――




 魔法は解けた。目の前には千早が呆然とした表情で私を見下ろしている。
 人間は失敗から学ぶという言葉は、コイツに限っては例外なのかもしれない。恋は狂気とはよく言ったものだ。
 私は千早を押しのけて立ち上がった。半開きのドアの前では、ニヤついた顔の美希が紙袋に入れた写真をひらつかせている。
 ここまで上手くいくとは思わなかった。まぁこのあたりはアイツの得意分野だから、想定の範囲内だけど。

「デコちゃんやるぅ」
「うっさい。あとデコ言うな」

 春香は間の抜けた顔をしてこちらを見つめている。まぁ『知らない』んだから仕方ないことだけど。
 持っていた100%オレンジジュースを千早に放り投げる。私なりの餞別はパーフェクトな放物線を描いて千早の額に着地した。
 ここから先は私の出る幕じゃない。出来ることといえば美希の耳を引っ張って部屋の外に出るだけ。

「いたいのー」
「はいはいよかったわねじゃあここは現実よ」

 私はいつの間に駄々をこねる子供の保護者になったのだろう。しかも同い年の。うんざりと私は息を吐いた。
 さっさと美希を引っ張り出して、春香のことは千早に任せればいい。逃げ出してきたら追い返してやるんだから。
 私と美希は二人が話し終えるまで、気長に待てばいい。そう思って部屋を出ようとすると、美希に手を振り払われた。

 驚いてミキを見ると、首を横に振って立ち止まっていた。
 私と彼女を隔てる框、美希はそこを越えようとしない。

「アンタ、これ位の空気は読めるでしょ」
「や」

 またお得意の我儘か。図らず視線が鋭くなり、問答無用に叩き出そうと思って彼女にガンを飛ばす。
 目が逢う。美希は笑った。それはもうふてぶてしい位に、崩れそうな目尻を必死に保ちながら。
 そんな顔しないでほしい。何も言えなくなるじゃない。

「……勝手にすれば」

 私は美希を置いて扉を締めた。そしてそのままずるずると腰を落とす。
 扉の向こう、私の頭の少し上、こつんと頭が扉に当たる音がした。たぶん美希だ。
 扉が閉まってしばらくした後、春香と千早の罵声が聞こえ始めた。それはもう聞いてられない位ひどい内容。

「辛いだけでしょうが」
「うん。こんな春香と千早さん、ミキは見たくない」

 ガラスのコップが勢いよく割れる。泣き叫ぶ声と嗚咽。

「だったらなんで」
「ミキ、二人とも大好きだから」
「ああそう」

 テーブルに身体が叩きつけられた。
 ガタンともう一人が馬乗りになり、顔が赤くなりそうな乾いた破裂音がした。
 耳を塞ぎたくなる。想像したくもないのに光景が浮かんでしまう。

「時々アンタを尊敬したくなるわ」
「そんなこと言っちゃってぇ」

 美希の声は変な所で上ずっていて、それがまた扉越しの光景の凄惨さを表しているようだった。
 無理やりにおどけているのが丸分かりだけど、敢えて追及しないことにしておく。

「デコちゃんもちゃんと聞いてるんでしょ?」
「聞いてないわよ。聞こえてるだけ」
「素直じゃないんだからー」

 素直じゃないのはお互い様だ。この世の中で素直に生きて幸せになった人間がいるなら国宝ものだろう。
 ブリキの灰皿がドアに投げつけられる。安っぽい金属音が響いて、床に煙草の吸殻がぶちまけられる。
 金に染めた髪には今頃燃えカスが降りかかっているのだろう。それでも美希は今いる場所から動かなかった。

「春香ってね、お姉さんぶってるけどすごい寂しがり屋なの」

 狂ったように何度も繰り返される誰何の声。身体が床に落ちる。
 扉が拳で叩かれる音。私にはアイツの気持ちなんてわからない。

「千早さんは、パッと見は大人だけどすごい怖がりさんなの」

 雷鳴。嬌声と拒絶。悲鳴と奇声。鈍い殴打の音と裂かれる布切れ。
 絞り出される声。別に話す必要なんてこれっぽっちもないのに。板一枚挟んでアイツの震えが伝わる。

「二人とも、もっとミキみたいにずるくなればいいのに」
「……だけど、ずるかったら好きになんてならなかった」

 魂をゴムのように無理やり伸ばして引きちぎったような声を最後に、部屋の中は静かになった。
 ぽつりとそう呟いて、美希は黙った。扉を一枚隔てたその先は、きっと阿鼻叫喚の光景が広がっているのだろう。 
 しばらくすると、あのとき渡した写真が扉の隙間から姿を現した。私はそれを受け取る。

 プロデューサーと、私と美希と、千早と春香が楽しそうに笑っている写真。

 今の状態をアイツが見たら、どんな顔をするのだろうか。戻れぬ過去はまるで遥か彼方の夢。
 裏を見ると、アイツの文字と、私の計画と、隅に隠れるようにして美希の文字が書いてあった。
 彼女にしては珍しい位に謙虚な文字のそれを読んで、私は深くため息を吐く。

「アンタが自分で考えなさい」
「デコちゃんはもっと優しくなってもいいと思うの」
「知ったこっちゃないわよ。あとデコ言うな」

 美希はあははと乾いた笑いを洩らした。

「ねぇデコちゃん」
「だから、」
「3号さんでよかったら、ぎゅってしてあげるよ」
「……結構よ」

 この金髪毛虫は一体どこまでお見通しなのだろうか。天然なのか計算なのか全く分からない。
 ただ分かることは、私の身体が震えていることが美希にはお見通しということだ。

「私だってね。セーラー服着たり、普通に女の子女の子してる夢とか見たかったのよ」
「うん」

 怖かった。

 幻だったとしても、自分が仕掛けたものだとしても、私にとってそれは明瞭に映る現実だった。
 自分の望まぬところに触れる千早の視線、指先、覆い被される圧迫感。そして何より、

 その暗澹とした瞳に潜む獰猛な劣情。

 思い返すだけで背筋に嫌なものが走る。美希はあの瞳を幾度見てきたのだろう。
 どうして美希はそれを受け入れることができたのだろう。私にはまだ分からない。 
 身体は未だ震え、首筋にはじっとりと脂汗が浮かんでいた。

「学校の友達と話したり、どうでもいい下世話な話で笑ったりしたかったのよ」
「うん」

 今着ている制服は衣装室から借りてきたものだ。勉強はもっぱら家で家庭教師に教わっているからあまり必要ない。
 自分の背丈に合ったものを見た時、いわゆる普通の学生だったらこういう服を着るんだろうな、と夢想した。
 そして、普通の学生が一体どんなことをしているのか、あまり想像できない自分に落胆した。

「ホント馬鹿よ。馬鹿ばっかりでイヤになるわ」

 部屋の中、テーブルが動き、私の知っている春香と千早の声が聞こえてきた。

「ミキ、行くね」

 そう言い残して美希は私の背中から立ち去った。いつも通りの能天気な声が聞こえてくる。
 かける言葉が見つからなかった。あの悪友からすれば、私が見たいと願うものは何の価値もないものなのだろう。

 それでも。

 身体の震えが収まるまで、ただぼんやりと私は手の中の写真を眺めていた。

 









 最後のカードを引く。
 男が引いたのはダイヤの8、兎はダイヤのクイーン。
 男は黙って時計を兎に渡した。

「勝つことのできないゲームに興じるなど狂気の沙汰だ」

 兎は言い放った。3度の勝負をしてきた男は知っている。
 兎が作るのはいつもロイヤルストレートフラッシュ。まるでそうなることが予定されているかのように。

「私は賭けるが、乗るんだろう?」
「もちろん」

 男はずっと待っている。静かに笑みを浮かべながら。

「賭けるものは、そうだな……」



  ―――― Above Broadway ――――



 今でもまだ信じられない。だって、プロデューサーさんはそこにいるのに。
 どうして千早ちゃんはプロデューサーはいなくなったなんて、そんなことを言うのだろう。
 でも、投げたコップはプロデューサーさんの頭をすり抜けて床に落ちて割れていた。


「ずいぶんとサマになったじゃない」
「おかげさまで」

 私と千早ちゃんが落ち着いてからしばらくした後、伊織が部屋に入ってきて、開口一番千早ちゃんにそう告げた。
 ズタズタになった制服と爪の痕を隠すように、千早ちゃんはジャージのジッパーを一番上にまで上げる。
 まだ足元がふわふわしている。千早ちゃんは私のことを何も咎めなかった。まるで何もなかったみたいに。

「ちゃんと渡したんでしょうね」
「ええ」

 千早ちゃんが私に渡してくれた一枚のカード。
 引き裂こうとして強引に止められたことを思い出す。それは大切なものだからと、でも何が大切なのか分からない。
 ソファに座ったプロデューサーさんが笑っている。誰かと話しているみたいだけど、強い雨の音に遮られて聞こえない。
 その口の動きで言葉を読みとろうとしたら、急に後ろから美希に抱きつかれた。

「むふふ。今日もいい抱き心地してるのー」
「ちょっとどこ触って…」
「美希」

 千早ちゃんに呼ばれた美希は、少しの間ぽかんとして、嬉しそうな顔で私の背を押した。
 急にバランスが崩れてつまづいてしまいそうになる。すっと腕が伸びて、私は千早ちゃんに抱き締められた。
 時間にすれば数秒未満。千早ちゃんは肩のあたりを軽く撫でてから、私を解放した。

「見せなきゃいけないものがあるの」
「……分かった」

 それはたぶん、みんなが知っていて、私だけが知らないプロデューサーさんの最後の姿。
 今でも信じられない。だけど私が見なければいけないものだと千早ちゃんは言っていた。

「どうすれば魔法が使えるか、分かるわね」

 ゆっくりうなずくと、千早ちゃんは悲しそうに微笑んだ。
 どうしてそんなに悲しそうなんだろう。見えないはずのプロデューサーさんに会えるのに。そこまでは教えてくれなかったけど。
 千早ちゃんはポケットからカードを取り出して、伊織の方を見遣る。

「行くに決まってるじゃない」
「だと思った」
「ねぇねぇ千早さん!美希は?」
「カウント済みよ」

 ちはやさんだいすきーとか何とか言って、美希は私の背後にすり寄った。近い!近いから!
 無駄に鼓動が跳ね上がりそうな私をよそに、千早ちゃんはじっとカードを見つめ、感慨深そうに口元を緩める。

「私達はアイドル、私達とプロデューサーがいれば」
「どんな夢でも叶う」

 私の言葉を聞いた千早ちゃんは、すっかり温くなったオレンジジュースを私に差し出した。
 千早ちゃんは私に彼女が知っている魔法の全てを教えてくれた。使い方も、魔法が生まれたわけも。
 ずずずとジュースをすすり、喉を潤す。どうせ3分しか幻は見ることができないんだ、だったら。
 私が望む幻を千早ちゃんに伝えると、そんな考えは思いつかなかったわ、と呆れて笑っていた。

「タイミングは一瞬、一回きり。後は春香の好きにすればいいわ」

 千早ちゃんがプロデューサーの名前をカードに向かって呟くと、今までいた世界が真っ白になる。
 これは幻なのだ。千早ちゃんが私に見せたいプロデューサーさんの過去。取捨選択された幻影。
 パン!と乾いた音がして、視界がぐにゃりと歪む。自分が知らない自分がいた世界へ。怖くなった私は千早ちゃんに抱きついた。








「春香、もう目開けてもいいよ」

 耳元で美希が囁く。

「アンタはもうちょっと自重しなさい」
「はーい」

 目を開けるとそこはさっきと同じ応接室で、時計がカチカチと秒針を鳴らしていた。
 千早ちゃんは一体何を見せたかったんだろう。そう思って正面を見ると、千早ちゃんが無表情にある一点を見つめている。
 その視線の先に見たいものがある。そう直感的に理解した私はあわててその方向に顔を向けた。

10670420_m.jpg


「元気にしてたか?」

 テーブルの向かい、対面のソファの向こう、見慣れた姿。

 プロデューサーさんが、そこにいた。



「……役は揃った。勝負はここからだ」
「勝負などすでに決まっている」
「絶望したときほどふてぶてしく笑ってるもんだぜ」

 すぐ向かいのソファから、低い男の人の声が聞こえる。
 プロデューサーさんはテーブルに置かれてある8枚のカードを裏返した。

「最高の瞬間を想像するんだ。勝つためにはそれだけでいい」

 そう言ってプロデューサーさんは私に目配せした。オーディションの前に必ず言ってくれた言葉。
 ここしかない、そう思った。どうか、どうか、私の願いが世界に届きますように。
 プロデューサーさんの名前を呼んだ。

 手にもっていたカードが消える。
 美希も、伊織も、千早ちゃんも、プロデューサーさんも消える。
 消失する風景と再生される記憶。
 時間にして10分足らずの記憶だ。私が忘れていた思い出。激流のように流れ込む情報に目が眩む。


 
    こんなことって、ないよ



 瞳をこじ開けると、そこには私と兎と10枚のカードだけが残されていた。

「あの男は逃げたのか」
「違います」

 いや違う。カードが10枚「も」残されてるんだ。
 寂しくなんてない。私は一人じゃない。深く息を吐いて、兎に微笑みかけた。

「勝負はここからですよ、神様」



    ◆ ◆ ◆ ◆ ◆



 神様に勝つためには、3分もあれば十分なのだ。
 ただそれを実行する人間がいるかどうかだけの話で。たまたまそれが私だったというだけで。
 ここは私の世界。この世界の「神様」は私。私はそっと伏せられたカードに触れて、一枚ずつ開きだした。

「能天気なクラブのクイーン」
「臆病なスペードのクイーン」
「天邪鬼なダイヤのクイーン」

 真ん中のカード。私はその正体を知っている。叩きつけるようにカードを開いた。

「寂しがり屋なハートのクイーン」

 最高の瞬間。私が一番欲しかった世界。
 それはメモ書きにされた写真の風景だった。私はそれを強く想像した。
 私と、伊織と、千早ちゃんと、美希と、        

「クイーンのフォーカードでは私には勝てない」

 神様は自分のカードを開く。ダイヤのクイーンの代わりにスペードのジャックが混じっていた。
 それを横にして完成される歪なロイヤルストレートフラッシュ。
 確かにフォーカードでは勝てやしない。だけどまだ私は伏せているカードがある。

 きっと、そのカードの正体は。

 記憶を辿る。勝ったとしても、それが私にとって幸せなのかどうかは分からない。
 だけど、プロデューサーさんは私に負けろとは絶対に言わなかった。
 だって、私はアイドルだから。それだけは変わることのない事実だから。

「ファイブカード」

 最後のカードは、紛れもなくジョーカーだった。ブロードウェイを上回る、唯一の役。
 兎の形をした神様は、信じられないといった表情で私を見た。

「ジョーカーなど、このゲームになかったはずだ」
「神様、知ってますか?」

 祈るように手を合わせる。プロデューサーさんの声が、千早ちゃんの声が、美希の声が、伊織の声が聞こえる。
 そうだ。私はその声に合わせてこう言い切った。

Farouk,the man who turned into the game role
「私達は、この世界の中で生きている人間なんです」


 パン!と音が鳴った。世界が一瞬赤に染まり、そして静かに白に染まっていく。私は瞳を閉じて幻が終わるのを待った。
 ……5、4、3、2、1、ゼロ。瞳を開ける。


「ただいま」

 聞き慣れた声。見慣れた風景。顔を上げると千早ちゃんがいて、すぐ後ろに伊織がいて、私の背中には美希がいた。
 時計を見ると、きっかり3分。テーブルの上からはカードが消えていた。
 私の魔法はなくなってしまったわけだ。
 ゲームには勝った。それならばいるはずだ。私は急いでソファに視線を遣る。

「変な登場の仕方をするね」

 プロデューサーさんは、そこにいた。

「さすがアイドル事務所だ。君達が俺の担当アイドルかな?」

 プロデューサーさんはにこやかに笑って私達に挨拶をした。新人だった頃のプロデューサーさんだ。
 スーツから名刺を取り出し、これからよろしくな、と肩を叩かれる。これも初めて会った時と同じ。
 分かっていたけれど、そう願ったけれど。

 ― 絶望したときほどふてぶてしく笑ってるもんだぜ ― 
 
 そうだ。これはプロデューサーさんで、プロデューサーさん以外の何者でもないじゃないか。
 私はプロデューサーさんの言葉を思い返し、プロデューサーさんに最高の笑顔を作って見せた。

「…プロデューサーさんは、運命の出会いって信じてますか?」

 雨雲はいつのまにか風に乗って消えて、まるで時間が逆転したような天気だった。






 Show Down.


コメント

  1. 月の輪P | URL | VFkxEMUo

    拝読しました。

    まるでサンジェルマン伯爵が語る、枠物語のように幻影が重なり、絢爛に夢想が舞うお話しでした。
    思春期の願望とパトスが塩梅のいいペーソスとなって、5人のアナー・カードがそれぞれに鮮やかに映えて見えました。
    読んでいて、「鏡の国のアリス」の最後の「赤の王様の夢に登場した、わたしが見た夢――いったいどっちの夢にどっちがいたのかしら?」といった言葉が何度となく頭を横切りました。

  2. ガルシアP | URL | MhlNZB0o

    ああ、これはこれは。

    割といつも思うのですが、小六さんのSSって実に映画的ですよね。
    シーンがあって、キャラクターが空間的に配置されていて。
    今回の作品はその傾向がいつも以上に濃かった印象です。
    「うお! 伊織かよ!?」みたいな細かな山場も面白いのですが、
    細切れの情報と断片的な事実が、最後のワンシーンに向けて収束していく流れが、
    とても面白かったです。
    ロイヤルストレートフラッシュに勝つファイブカードは、浪漫ですよねー。
    さて、それでは解説コーナーを拝見しに行ってきます。

  3. 小六 | URL | -

    コメントありがとうございます!

    コメントありがとうございます!小六です。
    今回は俺得浪漫を全面に追及した結果、ある意味読者おいてけぼりなSSになっている可能性が高いのですが、温かいコメントにいつも励まされております。読者様は神様です!
    というわけで、以下コメント・拍手コメントの返信となります。


    ≫月の輪P様

    >まるでサンジェルマン伯爵が語る、枠物語のように幻影が重なり、絢爛に夢想が舞うお話しでした。

     サンジェルマン伯爵とは、これまた畏れ多い賛辞、ありがとうございますw
     夢や幻といったモチーフが基本的に大好物なので、書いている最中はわっほわっほしていたように思います。
     今回の一枚絵は登場人物が4人ということで、比較的多めの見せ場が必要かな、と思いながらストーリーを練っておりました。
     幻に迷い、幻から覚め、幻を想う、そんな酒好きの酔狂な浪漫を全面に押し出した物語でした。


    >思春期の願望とパトスが塩梅のいいペーソスとなって、5人のアナー・カードがそれぞれに鮮やかに映えて見えました。

     思春期の痛々しい位の願望とパトスは、今回のSSで一番見せたかったものの一つですので、そう評して頂けると本当にうれしいです。
     自分も相手も傷付いて、その痛みに叫びながら生き続けるっていうのは、本当に青臭くて、人間臭くて、僕の大好物だったりします。
     今回のSSもそうですが、僕が書くアイドルは所謂アイドルじゃないんですよね。かわいくないです。
     ですが、その子が持つ生々しい、生きた魅力みたいなものを伝えられたらいいなぁと。そんなことを考えながらSSを書いております。


    >読んでいて、「鏡の国のアリス」の最後の「赤の王様の夢に登場した、わたしが見た夢――いったいどっちの夢にどっちがいたのかしら?」といった言葉が何度となく頭を横切りました。

     今回のSSのモチーフとなったものの一つに、伊織さんの知己である兎さんに登場して頂きました。
     その際『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』も資料として調べましたので、そのお言葉には少しびっくりしました。
     実は今回のSSには入れなかったのですが、アリスをオマージュしたシーンもありました。ですのでその名残があるのかもしれませんね。
     そこまで読みこんで頂けたことに最大限の謝辞を述べさせて頂こうと思います。



    ≫ガルシアP様

    >ああ、これはこれは。

     何がどうだったのでしょうか…。チキンハートな僕はガルシア先生の思わせぶりな言葉にどきどきハートです^q^

    >割といつも思うのですが、小六さんのSSって実に映画的ですよね。
    >シーンがあって、キャラクターが空間的に配置されていて。
    >今回の作品はその傾向がいつも以上に濃かった印象です。

     SSを書く際、自分は映画の撮影者であるという認識を強くもってイメージを切り取っています。
     ですので、以前のカレイドSSは僕にとってはある意味僕らしさが全面に出たSSなのかもしれませんね。
     昔ついったーで呟いていたことがあるのですが、どうも僕はそういう側面が強いみたいです。
     情景描写といいますか、アイドルがいる舞台もアイドルと同じ位大切に扱っております。
     何も言わなくても、何もしなくても、ただ情景が変わるだけで伝わるものはきっとあると思うんです。


    >「うお! 伊織かよ!?」みたいな細かな山場も面白いのですが、
    >細切れの情報と断片的な事実が、最後のワンシーンに向けて収束していく流れが、
    >とても面白かったです。

     今回のストーリーは伏線等々が色々絡まっておりますが、基本に忠実に書いております。
     『伏線を書いたなら、最後にきっちり回収』ですね。謎の解説をくどくせず、流れに身を任せてストーリーを書く。
     魔法の仕掛けについてはストーリーの流れが悪くなりそうなのでカットしました。
     最後の章である、Above Broadway のあたりで、ドキドキ感がMAXになったらいいなと思いながら書いておりました。


    >ロイヤルストレートフラッシュに勝つファイブカードは、浪漫ですよねー。
    >さて、それでは解説コーナーを拝見しに行ってきます。

     ですねー。絶対に勝てないだろうと自分を見くびっている相手にガツンと一撃くらわせるのとよく似た快感でしょうか。
     あくまで何事もなかったかのようにクールに微笑んでの勝利宣言。浪漫です。
     まぁ今回はある意味イカサマなのですが、それがまた神様相手なので人間臭さが表現できたかな、と。

     解説コーナーにつきましては、何をどう説明したらいいのかがよく分からないまま書いたので、結構乱文かもしれません。
     ですが、僕なりのストーリー作成方法を書きましたので、何かガルシアさんの参考になるものがあれば嬉しい限りです。


    ≫05/27 06:31 匿名様

     ありあまる賛辞、本当にありがとうございます。
     今回のSSで使ったテーマは、『青春の叫び』といいますか、青臭いですが、いつか書きたいと思っていたテーマでした。
     アイドルという少女をSSとして書くにあたっては、SS書きにとっては一度は書いてみたいテーマではないでしょうか。
     不器用で、まっすぐで、汚くて、ねじ曲がっていて、だけどその叫びには、何物にも換え難い美しい光があると思うんです。
     今回のSSはかなり入り組んだ内容になっておりますので、さっと読めるものではないと思います。
     詳しいことは解説という名の制作メモを記事にしましたので、そちらをご参照して頂ければ嬉しいです。


    ≫05/28 00:48 2.0(にーてんぜろ)P様

     ストーリーテラーとして、これほど嬉しい言葉はありません。本当にありがとうございます。
     基本的に3000字程度の短編SSしか書かないので、こういった中編(らしいです)を書くのは一枚絵SS位ですね。
     1万字を超えるSSなんて読んで下さる方がいらっしゃるだろうかとビクビクしつつ書いていましたw
     SSを書いていて、「面白い」という言葉は読んで下さった方に一番言って頂いて嬉しい言葉です。
     今回は結構技巧的な部分が多かったのですが、一番見せたかったところはそこではなく、テーマである『青春群像劇』でした。
     テクニックは大切ですが、ストーリーがなければ人の心は動かせません。ストーリーって本当に大切です。
     どうなるんだろう、どうなるんだろうと思いながら読んで頂いて、最後にぷはー!と息を吐く、そんなSSを目指しております。
     ですので、本当にうれしいです。これからも精進しながら地道にSSを書いていこうと思います。


    お読み頂き本当にありがとうございました!! 

  4. トリスケリオン | URL | UzUN//t6

    デュエル

    幻影の先の正体、誰が誰を魔法で見ているのか 誰かどれだけ真実を知っているのか
    そういう読み合いが楽しく、絶望の淵にそれぞれが立っていても希望が残っている
    から安易な逃げを打たないでそこにとどまって策謀を練り、魂でぶつかり
    最後の勝負の場に立てた 頭の中ではアニメの主人公の逆転のテーマが鳴り響きましたね

     自分が元カードゲーマーだったから、カード対決で絶対優位の相手を
    信じられない手で逆転する爽快感が 作品と別なところで感じましたね
    某マンガの「相手が勝ち誇ったとき そいつはすでに敗北している」というセリフが
    頭によぎりました^^
     今までの負けは、すべてこの最後の逆転への布石 Pがいて、千早がいて、美希がいて、
    伊織がいてこそのコンボ それは神を越える神の一手でしょうね

  5. 小六 | URL | -

    コメントありがとうございます!小六です。
    MTGは青単ビートダウンばかり使っていたような気がします。妹様の赤緑ステロイドに粉砕されていました。
    僕の渦巻く煩悩知識を対抗呪文!! はい、以下コメント返信となります。

    ≫トリスケリオン様

    >幻影の先の正体、誰が誰を魔法で見ているのか 誰かどれだけ真実を知っているのか
    >そういう読み合いが楽しく、絶望の淵にそれぞれが立っていても希望が残っている
    >から安易な逃げを打たないでそこにとどまって策謀を練り、魂でぶつかり
    >最後の勝負の場に立てた 頭の中ではアニメの主人公の逆転のテーマが鳴り響きましたね

    幻に翻弄されるアイドルというものを書いてみようと思って、こんな感じのストーリーとなりました。
    モチーフをポーカーにしようと決めて、それをアイドル達の方にどう反映させようかと考えた結果、
    Pと兎はオープンポーカー(手札がオープン)に対し、アイドル達をクローズドポーカー(手札が伏せ)みたいな感じで書いてみました。
    絶望の中にひっそりと光るものって、個人的にものすごく大好きなものの一つで、今回はそれを全面に押し出してみました。
    それぞれがそれぞれの思惑のもと、騙し騙され己の意思を貫く、みたいな、そんな浪漫の産物でした。
    書いているときは、「諦めたら、そこで試合終了ですよ」という安西先生の言葉が思い浮かんでいましたw


    >自分が元カードゲーマーだったから、カード対決で絶対優位の相手を
    >信じられない手で逆転する爽快感が 作品と別なところで感じましたね
    >某マンガの「相手が勝ち誇ったとき そいつはすでに敗北している」というセリフが
    >頭によぎりました^^
    >今までの負けは、すべてこの最後の逆転への布石 Pがいて、千早がいて、美希がいて、
    >伊織がいてこそのコンボ それは神を越える神の一手でしょうね

    自分も昔カードゲームにはまっていた時期があったのですが、
    絶望的な状況のもとで逆転の一手を見つけた瞬間って最高に気持ちいいですよね。
    今回のSSでいえば、神様がスペードのジャックを横にしてブロードウェイを作った瞬間が神様の敗北の瞬間でした。
    常識にとらわれないこと、ただ勝つことだけを考え、その一瞬を逃がさないこと。とても大切なことだと思います。
    Pはこれまで3度負けていますが、アイドル達が自分のもとに来てくれることをずっと待っているという設定でした。
    アイドルがいて、Pがいて、全員が勝利を望んだからこそできる最強の一手。
    少しアイマスの世界観からずれますが、個人的にはアイマスと共通する何かがあるんじゃないかなと思っていたりします。


    お読み頂き本当にありがとうございました!

  6. 寓話 | URL | SFo5/nok

    拝読させていただきました。

    『ゲームの世界』ですね。「一枚絵」四人のプレイヤー間の心理戦、
    探り合いと殴り合い、それと並行して動き続けている、「もうひとつの卓」。
    二つの卓の間を、小六さんの持つカメラが、ゆらりゆらりと動きまわり
    それぞれのゲームが、それぞれのクライマックスを迎えるまで、
    観客(=寓話)は、「どうするんだろう?」「どうなるんだろう??」と、
    思考を挟む間もなく、進行を見守り続けるしか出来ませんでした。

    そして迎える「プレイヤーの交代」。春香さんの選択。ゼロに戻るゲーム。
    一巡してぼんやりとしか捉えきれなかった、大きな輪の流れが
    「Farouk Demonstration」を通して眺めると、よりクッキリと、そしてここまで
    はっきりとした「世界」であったことが解り、背中がぞくぞくしました。

    小六さんワールドの広さというか、「世界観の確立」がしっかりしているので
    中のキャラクタたちの像が、それぞれの話の中でもズレないのでしょうね。
    「第三回」「第四回」と、ワールドの強さにぐいぐいと引きずり込まれた
    読み手のひとりではありますが、「第五回」のSSでは、それが一層深く、
    大勢の読み手に向けられた、エンターテイナー色の強い作品だったように
    感じられました。


    「Farouk」の中で、どのキャラクタが一番好きか?と問われれば、「美希」を。

    「Farouk」の中で、どのシーンが一番好きか?と問われれば、「日記を賭けるP」を。

    「Farouk」の中で、どのセリフが一番好きか?と問われれば、
     (Farouk,the man who turned into the game role)
    >「私達は、この世界の中で生きている人間なんです」 を、挙げます。


    一枚絵の使い方、「視点」が何よりもキーとなった十さんのイラストでしたが、
    あのタイミングで、春香と他のアイドルたちが目にした相手がPであったこと、
    その視点に「一瞬だけ読み手がシンクロする」ところで、「上手い……!!」と思いました。

    「一枚絵」の持つ雰囲気が、あそこでバシッと炸裂して、「ああこれは一枚絵のSSだ」
    「他のイラストでは出てこない世界だ」という感覚が、なによりも強烈なインパクトでした。

    一枚絵から広がる世界、そしてそこから更に拡大する、小六さんワールド。
    解説記事と合わせて、とてもとても広い世界でした。その一端を見て、最後まで呑み込んで、
    読み手として「ふへー」「これはすごい」と、ただただ感動した自分と、
    書き手として「グギギ」「おのれ小六さんめ…」と、ちょっと嫉妬した自分がいます。

    「一枚絵」に参加していちばん嬉しいところですね。
    面白いSSに出会えること、自分ももっと面白いものを見せよう、という気分になれること。
    これらは個人で書いているだけでは、なかなか貰えないものだと思っています。

    小六さんのSSのみに括って、いつかがっつり感想を語りたいなあ、という野望を抱えつつ、
    今回は「ちょっとだけ」『Farouk』の感想を語らせてもらいました。


    素晴らしい小六ワールドでした。ありがとうございました!!

  7. 小六 | URL | -

    コメントありがとうございます!

    コメントありがとうございます!小六です!
    こんなにソウルフルなコメントを頂いた場合、嬉しすぎて僕は一体どうすればいいのでしょうか…とりあえず溶けておこうと思います。
    以下、コメント返信となります。

    ≫寓話様

    >『ゲームの世界』ですね。「一枚絵」四人のプレイヤー間の心理戦、
    >探り合いと殴り合い、それと並行して動き続けている、「もうひとつの卓」。

    今回のSSのモチーフをポーカーゲームにしようと決めた際のことなのですが、
    Pと兎さんは明示的なポーカー、アイドル達はポーカーっぽい心理戦を担当して頂こうと考えていました。
    こういう探り合い・殴り合いというのは滅法苦手なのですが、こういう話を考えるのは大好きだったりします。
    切り札をいつ使用するか、何に使用するか、こういう雰囲気に書きながらわくわくしていたりしました。


    >二つの卓の間を、小六さんの持つカメラが、ゆらりゆらりと動きまわり
    >それぞれのゲームが、それぞれのクライマックスを迎えるまで、
    >観客(=寓話)は、「どうするんだろう?」「どうなるんだろう??」と、
    >思考を挟む間もなく、進行を見守り続けるしか出来ませんでした。

    SSの良さといえばいいのでしょうか。視点変更がかなり自由に使えるんですよね。
    近景⇔遠景、人物視点、ズーム、パンアップ、果てはこの世に存在するはずのない世界にまで。
    自分の思考の世界を自由に行き来して魅力的な世界を撮影するって、本当に面白いです。
    今回はかなりカメラをぐりぐり回していたような気が致します。

    Colt 4 Alice Ivers は僕がよく使用する普通のカメラワーク
    One Eyed Jack と Deadman's Hand はDemonstrationにもありましたシュレディンガーの猫を意識しています。
    Above Broadway に至っては、別世界にまで撮影に向かいました。大変貴重な経験をさせて頂きました。

    そんな感じで俺得感満載なカメラワークでしたが、お楽しみ頂けましたでしょうか?


    >そして迎える「プレイヤーの交代」。春香さんの選択。ゼロに戻るゲーム。

    プレイヤーの交代に気付いて下さるとは…これだけで僕はうれし涙が洪水警報です。
    はい、その通りです。神様とのポーカー、最後のプレイヤーはPではなく、春香さんでした。
    この辺りがラストのあの結末になってくる要因にもなってきます。
    もし春香さんが神様に勝ったとしても、その報酬は春香さんのものであり、Pのものにはなりません。
    僕はSFや科学については本当にずぶのド素人なので、あまり正確な理解を持っていないのですが、
    タイムパラドクスが原因であの結末になったのか、それともプレイヤー報酬を貰えなかったからあの結末になったのか。
    その辺りはどちらでもいいかな、というスタンスをとっております。排他的かもしれませんし、両立的かもしれません。
    これにつきましては、どうぞ寓話先生の「お気に召すまま」ご解釈下さるとうれしいです。


    >一巡してぼんやりとしか捉えきれなかった、大きな輪の流れが
    >「Farouk Demonstration」を通して眺めると、よりクッキリと、そしてここまで
    >はっきりとした「世界」であったことが解り、背中がぞくぞくしました。

    基本的に設定や下調べはしっかり仕込む方なのですが、それをストーリーにするとどうも全部が消化できない人間です。
    書いてもいいのですが、書いたら書いたでストーリーが分かりにくくなるといいますか。そういうものが多いですね。
    結局僕にとって何が書きたいのか、今回は「青春群像劇」だったので、それをぼかすような設定の描写は極力抑えました。
    抑えるかわりに、SS中にこっそりひっそりそれらを暗喩させる言葉を仕込んで、読み手の方が楽しんで頂けたらな、と。
    ちなみに今回調べた資料は、あの解説記事の他に、シェイクスピアの『オセロ』『お気に召すまま』がありました。
    日記を賭けるシーンで、Pが「心に鎧を着たお姫様」と言っていたり、「お気に召すまま」と言っていたのはこれですね。
    金田一少年の事件簿は、最後の人間ドラマだけ見て満足するタイプでした。本当にありがとうございます。


    >小六さんワールドの広さというか、「世界観の確立」がしっかりしているので
    >中のキャラクタたちの像が、それぞれの話の中でもズレないのでしょうね。

    僕の書き方は、プロットを作って、舞台を決めて、出演するアイドル達が動く様を文字で撮影するという流れになることが多いです。
    アイドルの子達は本当に魅力的で才能あふれる子ばかりで、出だしだけ説明すれば、後は勝手に動いてくれてます。
    撮影段階に入ると、本当に僕は撮影するしかないので、色々わたわたと現場で動き回っています。
    ちゃんと撮りたいシーンを魅力的に撮影する技術がほしいですね。本当に。


    >「第三回」「第四回」と、ワールドの強さにぐいぐいと引きずり込まれた
    >読み手のひとりではありますが、「第五回」のSSでは、それが一層深く、
    >大勢の読み手に向けられた、エンターテイナー色の強い作品だったように
    >感じられました。

    書きながら感じていたことは、
    このSSって、何か「アイドル達のジャンケン大会」と「雀姫伝」を足して6で割ったみたいだな、ということでした。
    作業工程が70%位になったときに気付いたのですが、「ま、面白そうだからいっか」という感じで進めておりました。
    それだったらカードじゃなくて超能力とかの方がよかったんじゃね?と書き終わった後に考え、
    いや、カードじゃないと最後上手くいかないから!もうこれでいくの!と自分に言い聞かせて書いていましたw
    何となくですが、こういう超常的といいますか非日常的なツールを使うと、結構エンタメ色が出るのかな、と。
    その分自然な空気感が犠牲になってしまうわけですが、それはそれでアリかなと。そんなSSでした。


    >「Farouk」の中で、どのキャラクタが一番好きか?と問われれば、「美希」を。

    このSSを書いていて、涙しながら泣いていたのは Deadman's Hand でした。
    最初の予定では美希さんと伊織さんが両方とも部屋から出て、部屋の中の音を聞きながら過去を回想するシーンだったのですが、
    美希さんに「や」と言われて、そうですか、じゃあそうします。という感じで部屋に残ってもらいました。
    あくまで僕のSSの中での話ですが、僕は美希さんがかなり好きだったりします。
    いわゆる「ゆとっている」美希さんもそれはそれで好きなのですが、僕のSS中の美希さんはあまりゆとってないんですよね。
    本当にずるがしこいです。本当にわがままです。だけど、何故か愛しいんです。


    >「Farouk」の中で、どのシーンが一番好きか?と問われれば、「日記を賭けるP」を。

    寓話さんのChanges.にもつながることなのですが、大人にとって思い出って、本当に大切な宝物だと思うんです。
    何がどう大切なんだと問われると、なんとなく大切なんです、としかお答えできないのですが、
    真夏の果てしなく澄み切った青空を眺めているような、夕暮れに燃える雲に心打たれたときみたいな、
    そんな感傷的な何かがそこにあるような気がするんです。いつもは忘れているけれど、たまにふっと思い出す何か。
    思い出を賭けるということは、人として大切な何かを捨てる勇気があるということで、
    それ位にアイドル達を大切に思って、それを後悔するつもりなんてさらさらない。そんなPもいてもいいかな、と。


    >「Farouk」の中で、どのセリフが一番好きか?と問われれば、
      (Farouk,the man who turned into the game role)
     >「私達は、この世界の中で生きている人間なんです」 を、挙げます。

    ゲームの中で生きているからこそ、ゲームの中で頂点に立てる資質のある子達だからこそ、価値のある台詞だと思います。
    この台詞ありきでストーリーを展開していました。いわゆるロックソウルですね。極めて反抗的な台詞だと思います。
    この台詞は初めはPが言う予定だったのですが、ウェイトバランスから春香さんに語ってもらうことになりました。
    大丈夫かな、と思いながら進めていたところ、Pが言うよりも春香さんが言った方がしっくりきまして、
    「おお、こっちの方がいい感じに収まりそう」というテイクが撮れた結果、こちらを採用したという感じです。


    >一枚絵の使い方、「視点」が何よりもキーとなった十さんのイラストでしたが、
    >あのタイミングで、春香と他のアイドルたちが目にした相手がPであったこと、
    >その視点に「一瞬だけ読み手がシンクロする」ところで、「上手い……!!」と思いました。

    書いているときに口から出たのが、「目と目が逢うーしゅーんかん好ーきだーと気付ーいたー」でした。
    いや別に今回は誰が誰を好きで、そういうシーンではないのですが、何故か言葉に出ておりました。
    はたからみたら、さぞ気持ち悪い光景だったと思いますw

    「視点」がかなりキーだったと思います。目が「こちら」を向いているイラストは今回が初めてだったのではないでしょうか。
    パッと見、フライデーに撮られたのか?「765プロ禁断の園、シュークリームのように甘くとろける乙女たちの情事」
    …みたいなキャッチフレーズが思い浮かんだのはいい思い出でした。脳内でキャッキャウフフ妄想余裕でした。
    目が逢った瞬間、ちょっとのけぞってしまうみたいな、それ位のインパクトがあったらいいなと思いつつ書いておりました。
    ぞぞっと背筋が痺れるみたいな、そんな感覚を楽しんでいたけたら書き手としてこれほど嬉しいことはありません。


    >「一枚絵」の持つ雰囲気が、あそこでバシッと炸裂して、「ああこれは一枚絵のSSだ」
    >「他のイラストでは出てこない世界だ」という感覚が、なによりも強烈なインパクトでした。

    僕の一枚絵SSって、色んな意味で一枚絵の世界から飛び出さないSSが多いような気が致します。
    一枚絵の魅力を引き出すことを第一目標として書いているからかもしれないのですが、基本的に一枚絵の世界に沿っております。
    そして今回の一枚絵ですが、「クールにバシッと決まってる」みたいな印象を最初に感じました。
    フライデーではないのですが、一流のカメラマンによって計算されつくされた一枚と言えばいいのでしょうか。
    膨大なストーリーと雰囲気が一瞬の世界に封じ込められたみたいな、そんな印象でした。
    ですので、今回はその雰囲気とストーリーで一枚絵を描写してみようと思って書いておりました。

    今回の一枚絵の様相は、文字で描写するとかなり文字数がかかるものだったのですが、それは一枚絵にお任せしてみました。
    文字で書くよりも、イラストで見せた方が読み手にとっても分かりやすいですし、そちらの方が効果的と思っています。
    パッとイラストを見て、それに違和感を感じない。
    そんなストーリーテリングが一枚絵SSには必要なのかな、と思っていたりいなかったりします。


    >一枚絵から広がる世界、そしてそこから更に拡大する、小六さんワールド。
    >解説記事と合わせて、とてもとても広い世界でした。その一端を見て、最後まで呑み込んで、
    >読み手として「ふへー」「これはすごい」と、ただただ感動した自分と、
    >書き手として「グギギ」「おのれ小六さんめ…」と、ちょっと嫉妬した自分がいます。

    寓話さんの小六ワールド頂きました!!寓話さんにぐぎぎされるなんて…嬉しいです!!嬉しすぎて溶けちゃいますよ!!
    前回の一枚絵にもありましたが、解説はいわゆるアルティマニアみたいなものとしてお楽しみいただけたらな、と。
    ゲームをプレイするのも好きなのですが、ゲームよりもゲームの解説本を読む時間の方が好きだったりします。
    その世界観で何か物語を作って頭の中で動かしてみたい、そんな世界の魅力に想いを馳せる時間が好きです。
    僕が書いたSSと、その世界観が、寓話さんにとってそんな世界観になっていたとしたら、本当に幸せです。


    >「一枚絵」に参加していちばん嬉しいところですね。
    >面白いSSに出会えること、自分ももっと面白いものを見せよう、という気分になれること。
    >これらは個人で書いているだけでは、なかなか貰えないものだと思っています。

    ですね!面白いSSに出会えるって、本当に心がわくわくします。こんな世界があったのか!うおおすげえ!みたいな。
    人の目って前にしかついていなくて、自分の目には見えていなかった世界なんていくらでもあるんですよね。
    それを文字という媒体を使ってその人の世界観を楽しめるんですから、本当に面白い体験であり、経験だと最近思います。
    ここ最近はSSを書かなきゃという感じで忘れがちだったのですが、SSの本当の基本的な部分だと思います。


    >素晴らしい小六ワールドでした。ありがとうございました!!

    こちらこそ、俺得浪漫120%のSSにお付き合い頂き、本当にありがとうございました!


    そして、お読み頂き本当にありがとうございました!

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