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一枚絵で書いてみM@STER投稿SSです

2010年08月22日 21:13

お久し振りです。小六です。
一枚絵で書いてみM@STERに投稿させて頂いたSSです。

以下、SSとなります。



「それじゃ、回すぞ」

 千早と貴音の二人が見守る中、響は地球儀の台についたスイッチを押した。
 カタカタカタ。スイッチの横についた数字盤がスロットのように動き出し、3人はそれを見守る。

「3」

 カタン、カタン、カタン。
 数字盤が数字を弾き出すと、地球儀の外周についた飛行船がぎこちない動きで3つ進んだ。

「南極」

 響がそう呟くと、千早はおもむろに立ち上がり、ワードローブの中を漁り始めた。
 真夏日。扇風機だけではどうにもやり過ごせない蒸し暑さに閉口しながら、響は千早の姿を訝しげに見つめる。
 隣にいた貴音はこの暑さのなか、平然とカップラーメンをすすっている。曰く、限定モノとのこと。
 いったい千早は何をそんなに焦っているんだ? そんな疑問を抱きながらも響は飛行船の下に現れた文字を読んだ。

「えーと、ペンギンの行進に阻まれる。一回休み」

 頭の中で響はその光景を想像した。自分の目の前によちよち歩きで行進するペンギンの群れ。
 ペンギンをペットとして飼うってのもアリだな。そんなことを思いながら、響がのどかな風景に心をなごませていると、

「我那覇さん!コート!!」

 千早の大きな声が部屋の中に響いた。めったに聞くことのない千早の大声に驚きながら響は千早の方を見る。
 耳あて、マフラー、コートに手袋。およそ夏の服装とはいえないものを千早は身に着けていた。

「如月千早、ついに気が触れてしまいましたか」
「言ってやるな貴音。千早だって色々悩むことだってあるさ」
「そういうことじゃなくて…」

 千早がを口を開こうとしたその瞬間、一際大きな風が部屋の中を吹き抜けた。
 テーブルに置いてあった書類やら帽子やらラーメンやらが飛んでいきそうなその勢いに、三人はぎゅっと目を閉じる。
 しばらくすると風は止み、響はゆっくりと瞳を開けた。










「あのさ、千早」

 響は目の前に広がる光景を眺めながら、千早に尋ねた。

「自分達、さっきまで死ぬほどクソ熱い部屋の中にいたよな」
「ええ、いたわね」

 千早はコートの襟を立て、吹きすさぶ風から身を守っていた。
 足元を見ると、さっきまでの安普請の床から一転、さらさらと雪が風に流れている。寒いと形容するにはあまりにも殺人的な寒さだった。
 その寒さに耐えきれず響は一つくしゃみをし、大きく身体を震わせながら叫んだ。



「じゃあどうして目の前にペンギンが歩いてるんだよ!!!」



 そこは、紛れもなく南極だった。




    ※ ※ ※ ※ ※ 



 
 如月千早が961プロの事務所に訪れたのは、それより数時間前のことである。
 巨額の資本金を元に立てられたプロダクション。その事務所の扉を開けると、安普請の賃貸事務所が広がっていた。

「間違えたかしら」

 それは千早が頭に描いていたイメージとはかけ離れた光景だった。
 千早は鞄から961プロの住所が書かれたメモ書きを取り出した。確認すると番地も合っている。また小鳥がどこか別の世界に旅立ったのだろう。
 そもそも765プロも架空の住所をホームページに載せていることだし、芸能事務所は基本的にそういうものなのかもしれない。
 そう結論付けて千早が扉を閉めようとしたそのとき、

「あいや待たれい!」

 凛と響く女の声。その声を聞いた千早は足を止め、どういうことかと眉をひそめる。
 事情をつかめないまま、いつの間にやら後ろに回った響に背を押され、千早はあれよあれよと事務所の応接室に吸い込まれていった。
 孫子曰く『彼を知り、己を知れば、百戦危うからず』 千早はコップ一杯に入った牛乳を飲み干し、大きくため息をついた。

「そう……世の中は非情ね」
「同情するならまず自分の胸から行うべきです。如月千早」

 簡単にいえば、こういうことである。
 千早の向かいでは、響が楽しそうに醤油入れのキャップをつけていた。50個で1円、内職でも給料である。
 
「だからさ、今は芸能事務所じゃなくて、探偵事務所なんだ」

 響はどこから取り出したのやら、ココアシガレットを口にくわえる。砂漠のラクダは僕達には早すぎるのだ。

「技の響と!」
「力の貴音!」
「「 二人合わせて!黒い流星!! 」」

 わらびもちを売るトラックの放送。粘っこい暑気の中、ちりんと風鈴が風に揺れている。
 千早は指を口に添え、「探偵って免許が要らないのかしら…いや、免許という言葉自体ナンセンスなのかしら」と真剣に悩んでいた。

「ほら貴音!だから自分は『赤い彗星』の方がいいっていったんだ!」
「それはシャア専用です、響」
「……何はともあれ、これを見てほしいの」

 千早はテーブルの上に地球儀のようなものを置いた。
 ブリキ製のそれは日焼けで黄ばんでいて、一目見てだいぶ古いものであることが分かる。

「事務所から帰ると誰もいなくて。テーブルの上にそれだけが残っていたの」
「あずさと一緒にみんな迷子になっただけじゃないのか」

 響はうろんげに千早を一瞥し、テーブルに置かれた『地球儀のようなもの』に手を伸ばした。
 台についてあったスイッチを押してみると、カタカタと横の数字盤が動き、現れた数字の数だけ小さな飛行機が動いていく。

「これは……」
「四条さん、何か心当たりでもあるの?」
「私が生まれるより遥か昔、禁じられた遊戯として知られております」
「そんな曰くつきのものがどうして」

 貴音は神妙な顔つきをして、地球儀の表面をうやうやしくなぞりあげる。
 埃を丁寧に拭き取った後、貴音はゆっくりとその口を開いた。

「これは……すごろくです」
「ごめん千早。貴音に期待した自分がバカだった」







        汽想域くるくるジャーニー







 ぺたんぺたんぺたん。ぺたんぺたんぺたん。
 リタルダントに足音を刻むペンギンの行進は、どこか牧歌的な雰囲気さえ漂っていた。
 
「くっ」
「これは困りました」
「ホントだよ。貴音、この状況どう思う?」
「とても……冷やし中華です……」

 貴音は両手に持ったラーメンの器を見つめながら呟く。

「まるでダイナマイトの発明を見たかのようです」
「……ああ、うん。とても平和的な考えだと思うぞ」
「我那覇さん!この装置はダイナマイトを作る機械なの?!」
「絶対違うから!!」

 響は悲鳴に近い叫びを上げ、サンダルで南極の大地を足で叩きつけた。
 サバイバルに必要なものは何か。それは十分な装備であり、冷静かつ迅速な判断力であり、なにより泰然自若とした強い精神である。
 その意味においては、この三人はそれを生まれながらにして持ち合わせているのかもしれない。

 しかし、我々は忘れてはいけない。
 自然は常に、人の思考を凌駕するということを。

「ねぇ、我那覇さん」
「とりあえずこのペンギンがいなくなるのを待てばいいんだろ?」

 冷静な状況判断である。が、しかし。そんな響の言葉などお構いなく、千早はフードをかぶり、響のはるか後方に視線を遣った。
 その視線を追いかけた響は絶句する。足元の雪がさらさらと『それ』に引き寄せられ、鈍い風音を響かせながら三人に近付いてきた。
 それを見た貴音は、こう呟いた。



「エターナルフォースブリザード」



 幻想的な作風で知られるイギリスのロマン派詩人、サミュエル・テイラー・コールリッジはこう語っている。
 『忠告とは雪のようなものだ。穏やかに降るほど、長く消えずに残り、心に染み込んでいく』
 逆説的に言ってしまえば、人間というものは、喉元すぎれば暑さを忘れ、吹雪すぎれば寒さを忘れる生物である。

「まぁ、なんでも、いいですけれど」
「ここが南極なだけにですね」
「千早がギャグを言うとか、ナニかの間違いだろ」

 とりあえず、相手は一瞬で凍りつく。


 
    ※ ※ ※ ※ ※ 
 


「それで、よく分からないうちに戻ってきたわけだけど」

 時計の針が気だるげに時間を刻んでいた。地球儀の上の飛行機は、南極の真上に浮かんでいる。

「『765プロのアイドルが消えた原因を調べて欲しい』……ということでしょうか?」
「まぁ、そういうことになるわね」

 普通ならば暑くていやになるはずの空気が、今は冷え切った体を温めていく。千早は急須から熱いお茶を湯のみに注いだ。
 洗濯の後の布団のように窓際でぐったりとしていた響は、やっていられないといった感じで二人に話しかけた。
 
「まさかその地球儀の中に閉じ込められたわけじゃないだろ?」
「もしそうだったら、我那覇さん達に相談なんてしないわ」

 そんなこと私達の手に負えるものじゃないもの。くすくすと笑って千早はお茶を一口飲んだ。
 ラジオからは2週間前位からよく耳にするヘビーローテーションが流れ、入道雲からのっそりと太陽が頭を出している。
 風鈴と車の音の隙間から空が鈍くうなり。地球儀の上に浮かぶ飛行機の模型は、錆だらけのネジが外れそうだった。

「また何かあったら連絡するわ」



 翌日、如月千早は二人のもとから姿を消した。 



「事務所に電話したら他のテナントが入ってた」
「ですが新聞の失踪者欄には何も書かれていませんでした」 

 お気に入りの球団が負けていることを確認した響は、スポーツ新聞を頭にひっかけソファで不貞寝している。
 正午過ぎのテレビの中、壮年のコメンテーターが我が事のように何かの事件について語っていた。
 窓から見える隣のビルの屋上では、空調のキャプラリィチューブが炎天下にも関わらずせっせと仕事にうなりを上げている。

「響」
「わかってるって」

 貴音の言葉を受け、響は両手を天井に掲げてゆっくりと身体を起こした。

「要は、このすごろくモドキにゴールすればいいんだろ?」

 響は日除け代わりのスポーツ新聞をテーブルに置き、すぐそばにあった地球儀に目を移す。
 飛行機の模型は南極に位置したままずっと停止したままで、まるで搭乗者の帰還を待ちわびているようだった。
 地球儀の上を走る点と線をなぞり始めた響に、貴音が冷蔵庫からビール瓶を取り出しテーブルに置いた。

「何にせよこれが初仕事ですし、験担ぎです」 貴音は瓶に入った琥珀色の液体をコップに注いだ。
「景気づけだな!よーし、パーっとやるか!」

 二人はカチンと互いのコップに乾杯を祈った。そしてごくりと飲み干す。

「響」
「わかってるって。お酒は二十歳になってから、だろ?このことは社長には内緒な?」
「いえ。それはただの麦茶サイダーです」
「一番悲しくなるヤツかよ!!」
「ちなみに私が飲んでいるのは養命酒です」
「……うん、自分が悪かった。ゴメン」

 友情の味は得てして酔狂なものであり、ほろ苦いものである。




    ※ ※ ※ ※ ※  




「6、ソールズベリー。ストーンヘンジは迷子の道標。3つ戻る」

「ゆきほーーー!自分が悪かったーーー!もうキミのこと得体が知れないとか言わないから!許してくれええええ!!」
「コレハ モハヤ アイ デス」
「響、手伝って下さい」
「何を?!」
「双海の双子から教えられた諸刃の必殺技です。萩原雪歩、目を覚ましなさい」
「「 合体魔法!ネーチャンイイオシリシテマンナー!! 」」
      \ スッパーン! /
 我那覇響と四条貴音が放ったボレーシュートはまっすぐ伸び、アンキモ・フライング・オブジェクト(通称UKIFO)に直撃する。
「シジョーサーン!」 ユキホは悲しげな声を上げながら、墜落していった。
「ユキホ殿、許して下さい。これもまた愛なのです」
「愛ってすごいな」


「2、ピサ。それでも地球は回る。振り出しへ戻る」

「へっくしょおおおい!   プロデューサーさんの靴下食べたい」
「なんかもう色々と間違ってるけどどうしたらいいのかしら」
 人の身体というものは、完成し尽くされた建造物のようでもある。伊織はひょうと雪玉を投げた。
 愛とは落ちた瞬間から自然と重力の渦に引きずられ、地に落ち割れるまで加速することを止めないのだ。
「詩人ですね」
「そりゃこんなもの見たら現実逃避もしたくなるよ」
 二人の目の前には堂々とそびえたつ一つの塔が頭を傾げている。
「765プロのアイドル……げに恐ろしきアイドルですね」
 花の都のど真ん中。人はそれを、『春香の斜塔』と呼んでいた。
 春香の斜塔は恋の重荷を背負うかのようにその大きな身体を傾け、静かに雪舞うパリに揺れていた。
「こけるなよ、絶対にこけるなよ」



「4、コペンハーゲン。人魚の歌とメランコリー。ソレントへ帰る」

 ここのーばばあはーよいばーばあー
 こころもーからだもーエフサーイズー
 あぁーばばあよーフォーエバーソーファイーン

「Fとは、かくも人の心を魅了するものなのですね」
「くっ」
「……あのさ、千早。元気出せよ」
「ボリューム疑惑の海苔弁当に言われたくないわっ!」
「千早さん!元気出して下さい!うざい位に真面目なのが千早さんのいいところじゃないですか!」
「そうね!悩んでても仕方ないものね!ちーちゃんがんばる!!」

 こうして人魚(自称)は美しい夕陽とともに飛び立っていきました。めでたし めでたし
( うわぁ……めんどくさい…… )




「ゴール、アレクサンドリア」

 そうこうしている間に、飛行機は最終地点であるアレクサンドリアに到着する。
 かたんかたんかたん。白い霧に包まれる部屋の中、世界は日本から砂漠の都へさらさらとその姿を変えていった。
 
「二人とも!来てくれたのね!」

 響と貴音を待っていたのは、千夜一夜の姫だった。具体的にはそんな感じの服を着た千早だった。
 千早は文字通り二人のもとに飛んできて、この世界の事情を話した。

「さぁ、この砂漠の牢獄から脱出しましょう!」
「……なぁ、千早」
「なにかしら」
「前からずっとずっと我慢して言わなかったんだけどさ」
「だからなに」

 

「 どうしてお前の服はいつもナウなヤングにバカウケなんだよ?! 」





    ※ ※ ※ ※ ※ 





 ~ これまでのあらすじ ~

 千早の持ってきたすごろく(貴音談)に翻弄される黒い流星の二人
 765プロはプロデューサーもアイドルも結構な変態さんだった
 ゴールした二人を待つ千早の姿はナウなヤングにバカウケだった



「簡単にまとめると、すごろくの呪いを解くには、すごろくの魔人にお願いすればいいのですね」

 貴音が原動機付箒のエンジン紐を引っ張ると、箒は威勢のいい声とともに軽く浮かび上がった。
 低く唸りながら高度をぐんぐん上げていく様子を見上げながら、響は空に浮かぶ城を眺める。

「人の空想を正確に保存して、他の人間も追体験できるようになる装置かぁ」

 響は自分が辿った道程を回想し、「誰があんなメチャクチャな妄想をしたんだ」とげんなり息を吐いた。
 そんな苦悶も露知らず、砂上の楼閣はふわふわと浮かんでいる。
 無人の砂漠にぽつりと浮かぶ雲の城。そこでどうやって生活するのかと考えると、とてもシュールな光景である。
 
「ほんと。色んなところを旅行できるなんて、素敵な機械よね」
「あずささんは時々考えることがおかしいと思います」
「あらそう?」 

 あずさレベルの迷子になると、自分が迷子になっているという感覚すらないのかもしれない。
 本当に旅行感覚で楽しんでいるのではないか。楽しそうに笑うあずさを見て、千早と響はそう思わざるを得なかった。
 とにかくも、雲の城へ向かう四人。砂漠の砂が思ったよりも厄介なことに閉口しながら歩くこと数十分。
 
「着いたわね」

 あっという間に目的地に到着したわけである。

「言っちゃなんだけど、トラブルとか何も起こらないんだな」
「どう見ても御都合主義です。本当にありがとうございます」
「HA☆HA☆HA!! 待ちくたびれたぞ勇者!!我こそが」
「確か肩のうしろの2本のツノのまんなかにあるトサカの下のウロコの右が弱点だから」
「よーし!行け!ペン太!!『ばくれつパンチ』!」

 ぺんた の ばくれつパンチ!!
 すごろくのまじん は たおれた!!

「ふふふ…やるな!!だがしかし俺は四天王の中で最弱……ッ」

 ちなみにペン太は南極で響が捕まえたペンギンである。

「四天王ですか……塩玉らぁめんが恋しくなってきました」
「帰ったらラーメン食べような、お前のおごりで」
「そんなことより早く元の世界に戻して下さい」
「それはできない」
「「「「 な、なんだってー 」」」」

 なぜならば、それは飛行機の魔人の仕事であって、俺の仕事ではないからだ。
 そう言い残し、肩のうしろの2本のツノのまんなかにあるトサカの下のウロコの右が弱点の魔人は息絶えたのであった。

「何というお役所仕事……」
「日本の少子高齢化はこれが原因だったのね」
「なんくるなさすぎるだろコレ」

 大きく足元が揺れる。まるで雲が空に溶けていくように、城は徐々に姿を崩していく。お約束である。
 
「それもこれも響が魔人を倒したのが原因ではないでしょうか」
「自分が原因かよ?!」

 そしてアクシデントに見舞われたときのパニックもお約束である。
 止まることを知らない崩壊。四人はなすすべもなく、ただ城が崩れゆく様をぼうと見守ることしかできなかった。
 お約束。二度あることは三度ある。そう人は言いけり。

「君達、仮にもアイドルではないのかヒポーン!アイドルならば、もっと堂々としなさヒポーン!」

 四人のもとに現れたのは、ピンチを救う救世主だった。

「我那覇さん、今ペンギン喋ったわよ」
「自分Bボタン連打してないぞ!!」
「なんと面妖な……」

 しかし、救世主とは一見してそれとは分からぬもの。
 嗚呼人の悲しき性たるや。人は己の外の事象は受け入れ難きものなり。況や異界の少女達は彼が救世主と知る術なからんや。
 なぜ人は争いを止めないのだろう。争いからは何も生まれることなどないと知りながら。笑止!嗚呼、人の悲しき性たるや。
 
「あらあらー高木社長じゃありませんかー」
「あ、ホントだ」
「先日は大変お世話になりました。高木殿」

「……………」

「千早君、気にしなくていいヒポーン。君にもきっと分かるときがくるさヒポーン」
「大丈夫よ千早ちゃん。ただ、あなたにはまだ早すぎたってだけなの」

 あずさとペンギンは何故か顔を赤らめて笑った。アレクサンドリアは空想の中でも暑い。
 ピンチになったときほど、頭はクールでなければならない。しかしこの暑さの中、千早は何故かクールでいられなかった。
 ふるふると震える拳を空にうならせ、床に叩きつける千早。それを最期に空の王国は足元から霧散していった。
 支えを失ったアイドル達御一行は、そのまま地上へと落下する。

「せいしゅんのばっかやろおおおおおおおおお!!!」

 そんな青臭い叫びを空に響かせながら。




「いーもん!!ちーちゃんDあるもん!!Dあったら空だって飛べるんだから!!」
「千早ちゃんおつついて!希望は翼になるかもしれないけど、胸は翼にならないのよ!!」

 意識よりも早く、あずさと千早の身体がぐんぐん落ちていく。耳朶が切れてしまいそうな落下速度に二人は叫ぶしかなかった。
 二人を助けようと、貴音と響は全速力で二人を追いかける。年代物のホバーからはぶすぶすと煙が立ち上っていた。

「いったいどうすりゃいいんだよ!!」
「安心したまえヒポーン!こんなこともあろうかとヒポーン!!」
 


  きゃっほー♪ きゃっほー♪ えへっへー☆ みんなのハート、キュンキュンしてるナリかぁ~?
  アタシのハートは、もうドッキリキュルルンズギャアアアン!って感じで爆発しそうナリよぉー♪
  それじゃあ、いっくよー! まっ



 その瞬間(とき)、あずさの目の前に一条の光が走った。

「さぁ!その光に手を伸ばしなさヒポーン!!」
 
 

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 あずさが光に手を伸ばすと、世界は光に包まれた。

「あずささん……」
「なぁに、千早ちゃん」

 柔らかい光に包まれながら、千早はそっとあずさの耳元で囁いた。

「その……左のワキ毛が…とてもサバンナです……」




    ※ ※ ※ ※ ※ 




「……っていう話があったんだよ」
「なにそれ。そんなメチャクチャなお話、信じられるわけないの」
「全くもって支離滅裂な話なのですが、私も実際この目で見たのです。美希」
「貴音が言うなら信じるの」「おい」

 美希は近くのコンビニで買ってきたお菓子を口に頬張りながら、二人の顔写真を不思議そうに眺めていた。

「だけどさ、真剣に千早さん達がいなくなっちゃったって思うのが二人らしいの」

 ホントはただ事務所が移転しただけなのにね。美希はニヤニヤとしながら貴音と響を見遣る。
 美希の視線を受け、貴音は深くため息をつき、響は軽く舌打ちをして高層ビルの窓から下を見下ろした。
 テーブルの上には、二人をヘンテコな世界に連れていったあの地球儀が置かれてある。

「たぶん、コレはさ」 響は苦い顔をしながら呟いた。
「黒井殿が最後に残した置き土産なのでしょう」
「なんだかんだ言ってもさ。黒井社長、アイドルがめちゃくちゃ好きなんだよ」
「あの顔のわりには、意外とロマンチストですし」

 そう言って笑う二人を見た美希は、「ふーん」と少し不満そうな声を洩らした。
 そんな話をしていると、扉の向こうからあずさと千早が姿を現した。

「我那覇さん、四条さん。高木社長からの伝言、『第二応接室に来てくれ』だそうよ」
「はいよ」「相承りました」
「あ、二人とも」

 響がドアを開けようとしたとき、後ろから美希が二人に声をかけた。

「グッドラック、なの」

「おう!お前らみたいなヤツが大丈夫なんだから、なんくるないさー」
「また同じステージで歌いましょう、美希」












 <了>











「そういえばさ。響達が言ってたこのすごろく、どうやって遊ぶのかな?」
「下手に触らない方がいいわよ、美希ちゃん」
「そうよ美希。二人も言ってたじゃない『台のスイッチには絶対に触れるな』って」
「あの、さ。千早さん」
「何?」



「実は、さっき触っちゃった。ポチって」





コメント

  1. ガルシアP | URL | MhlNZB0o

    不意打ち、闇討ち、奇襲、強襲。

    まずは意外な展開に驚きました。
    なんとなく、小六さんの作風とは距離のあるイラストかなぁ、
    小六ワールドに引き込むにはストーリーのありすぎる一枚絵かなぁ、と思いましたが、
    まさかここまで自分の作風を崩してくるとは思いませんでした。楽しかったです。

    惜しむらくは雑食性博学の小六さんの守備範囲の広さに自分の知識が付いて行かなかった所で、
    ドタバタギャグなどの中で元ネタが分からないと、なんとなく置いて行かれた様な、
    分からないまま進む事が悔しいような心境になりました。そんなポイントがいくつかあり、
    その点では、惜しい事をした、と自身の知識不足を悔いるばかりであります。
    でも、基本的には「アホかw」と突っ込みながら進みました。

    トータルでいうとおとぎ話的アイテムというか、ハリウッド的オブジェクトが主役ですが、
    SPシナリオの後日談的な設定の中での貴音と響の迷走が面白かったです。
    迷走? いや、千早含めて、暴走かもしれませんが……。
    こういう方向性はあまり無かったので、全く先が読めず、翻弄されました。
    意欲的な作品、挑戦的な作品だったと思います。

  2. トリスケリオン | URL | UzUN//t6

    腹痛いですw

    まず、探偵やるより漫才コンビとして売り出せばいいよねというツッコミをしたくなりますw
    響は突っ込みもボケもできるし 貴音さんのボケはもうトップ芸人クラスですよw
    (「とても……冷やし中華です……」 でいきなりツボに入りました)
     というか今回の作品は本当に小六さんらしくないという気もして、実に小六さんらしいと思います
    あの絵からこの展開を生み出せるのは小六さんの知識量ならでわなんだなあと 最近ニコマスではお笑い
    関連にいってる自分としては 今回の特に貴音さんの繰り出すギャグがツボついてきて腹筋の鍛錬に
    なっていますw 今回は本当に畳み掛けるごときのネタの洪水に 本当に元ネタがわかればもっと
    腹が痛くなるんだろうなという思いは強いですね 
     そして、お約束って最強ですねww

  3. 小六 | URL | -

    コメントありがとうございます!

    コメント・拍手ありがとうございます!小六です。
    一枚絵企画に参加して、もう7回目なんですね。この企画を通して、色々な経験をさせて頂いたなぁとしみじみ感謝しております。
    こんな拙作をお読み頂き、そして温かいコメントを頂き、本当にありがとうございます。
    以下、コメント返信となります。


    ≫ガルシアP様

    >まずは意外な展開に驚きました。
    >なんとなく、小六さんの作風とは距離のあるイラストかなぁ、
    >小六ワールドに引き込むにはストーリーのありすぎる一枚絵かなぁ、と思いましたが、
    >まさかここまで自分の作風を崩してくるとは思いませんでした。楽しかったです。

     ファンタジーは大好物で、他の方のイラストやSSを堪能するのは本当に大好きなのですが、
     いざ自分でSSにしてみろと言われると、なかなかに苦手分野なのかもしれません。
     書けるのかもしれませんが、頭の中でシミュレートすると自分の中での「読めるSS」のレベルに達せないんですよね。
     じゃあ、ファンタジー視点でかつ読みやすくするにはどうしたらいいだろうと思って選んだのがコメディでした。
     「小六の文章」の概念を一度全部ふっきって、コメディとは何たるや、一から色々考えながら書いてみました。
     これまでの僕の文章と比較すると結構異質な部類に入りますが、まぁこれも一枚絵企画ならではの醍醐味ですねw

    >惜しむらくは雑食性博学の小六さんの守備範囲の広さに自分の知識が付いて行かなかった所で、
    >ドタバタギャグなどの中で元ネタが分からないと、なんとなく置いて行かれた様な、
    >分からないまま進む事が悔しいような心境になりました。そんなポイントがいくつかあり、
    >その点では、惜しい事をした、と自身の知識不足を悔いるばかりであります。
    >でも、基本的には「アホかw」と突っ込みながら進みました。

     いやいやいや!それは完全にこちらの至らぬところですので、ご指摘頂けることはありがたいことです。
     元ネタとしては『魔法陣グルグル』を参考にさせていただきました。あとは適当に思いついたことをフリーダムですねw
     コメディを初めて書いて痛感したのが、キャラのクセを上手く活かすってなかなか難しいなぁということでした。
     後は、ボケやテンポをいかにズラしていくか。意識しながら笑いを作ることでしょうか。
     実をいえば、これで笑ってくれるのだろうかと不安だっただけに、そうやって突っ込んで頂けたことにほっと胸を撫で下ろしております。
     基本的にやたら真面目なものしか書かなかったので、良い経験になりました。

    >トータルでいうとおとぎ話的アイテムというか、ハリウッド的オブジェクトが主役ですが、
    >SPシナリオの後日談的な設定の中での貴音と響の迷走が面白かったです。
    >迷走? いや、千早含めて、暴走かもしれませんが……。
    >こういう方向性はあまり無かったので、全く先が読めず、翻弄されました。
    >意欲的な作品、挑戦的な作品だったと思います。

     今回のお話の基礎にさせて頂いたのは「ジュマンジ」というちょっと昔の映画です。名作です。
     砂漠にどうやって飛ばそうかなぁ、と考えた結果、それじゃあ全世界に飛んで頂きましょう!みたいな感じでしたw
     もそもそと書きながら、うーんそれならせっかく響さんと貴音さんが出てるから、じゃあこの二人に飛んでもらおう、みたいな。
     一応すごろくで飛ばした世界は、世界の七不思議にちなんだものでしたが、ガルシア先生もよく御存じの世界です。
     この企画、数字、出ているアイドル、どっかのド底辺SS書きが書いた世界のパロディであったりしました。
     かなり難産だったわけですが、色々と書いていて楽しかったです。



    ≫トリスケリオン様

    >腹痛いですw
    >まず、探偵やるより漫才コンビとして売り出せばいいよねというツッコミをしたくなりますw
    >響は突っ込みもボケもできるし 貴音さんのボケはもうトップ芸人クラスですよw
    >(「とても……冷やし中華です……」 でいきなりツボに入りました)

     演芸の頂点であるトリスケさんにそうおっしゃって頂けて、あーよかったちゃんとコメディになってたぁ…とほっとしています。
     今回のSSを書いていて気付いた点の一つとして、響と貴音ってこういう関係だったらいいなぁということでした。
     互いに脛に傷のある、といったらなんかちょっと違うような気もしますが、悪友みたいな感じだったらいいなぁと。
     貴音さんは結構ナチュラルにボケをかましそうなイメージがあります。ちょっと千早さんに似ているような、そんな感じがw
     「とても……冷やし中華です……」は狙っていったボケなだけに、全力でガッツポーズをしておりますww

    > というか今回の作品は本当に小六さんらしくないという気もして、実に小六さんらしいと思います
    >あの絵からこの展開を生み出せるのは小六さんの知識量ならでわなんだなあと 最近ニコマスではお笑い
    >関連にいってる自分としては 今回の特に貴音さんの繰り出すギャグがツボついてきて腹筋の鍛錬に
    >なっていますw 今回は本当に畳み掛けるごときのネタの洪水に 本当に元ネタがわかればもっと
    >腹が痛くなるんだろうなという思いは強いですね 

     今回の裏テーマとしては、小六ワールドをぶっ壊す!!でした。本当に色々とやっかいな世界ですねw小六ワールドというやつはww
     ですので、「らしくない」と評されると、とても嬉しかったりします。雰囲気がマンネリにならないよう、常に精進ですね。
     元ネタに関しましては、ニコマスの演芸m@sterをざかざかと漁りながら、どうやったら面白くなるだろうとネタをひねってました。
     なんかやたら小難しそうに語っているのは、完全に適当ですw コールリッジさんごめんなさい^q^
     笑いの方向性としては、cyanPさんの作品を参考にしながら、ツッコミが追いつかないくらいのコメディを目指してみました。
     cyanPさんのあの怒濤のネタには敵わないわけですが、お楽しみ頂けたのでしたらこれ幸いですw

    > そして、お約束って最強ですねww

     天丼の安定力は本当に最強だと思います。ええw




    ≫nkn様

     目指していたのがcyanPだったのがそもそもの間違いだったような気もしますが、僕はcyanP大ファンなので後悔はしておりません(キリッ
     当初の予定では完全コメディだったのですが、それだとキレイに落とせないことを察知したためのシリアスでしたw
     今回のお話で一番重点を置いたのが「テンポのよさ」でした。
     くどくならないように、読み手の方が飽きない前に展開させるように。ネタを入れつつ展開部は最低限にしつつ。
     文章の量からすれば前回の三分の一位の文量なのですが、これがなかなか。いい経験になりました。



    お読み頂き本当にありがとうございました!!

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