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1時間SS書きました

2010年09月11日 18:36

お久し振りです。小六です。
というわけで、1時間SS(という名の普通のSS)書きました。

お題:「残暑」「お見舞い」「手紙」「プール」
今回は「プール」を使用させて頂きました。
久し振りのはるちはに俺のテンションがわっほい

以下、SSとなります。



「ねーちはやちゃーん」
「ねーってばー」

 これはマズイ。非常にマズイ。千早ちゃんが返事をしてくれない。
 いや悪いのは私なのかもしれないけど、まさかここまで機嫌を損ねるとは思わなかった。
 私の問い掛けにも応えることもなく、千早ちゃんは私に視線を流した。その体感温度、約マイナス39度。
 うわぁ、そんな瞳で見つめられたら、春香さん凍死しちゃいます。

「せっかくのオフなんだから、泳ごうよー」
「せっかくのオフだから、休みを楽しんでるの」

 はぁ、さいですか。8月某日、快晴。水着の肩紐の周りがひりひりと痛むくらいに、太陽は元気だった。
 ウェルダンな足元が出来ちゃいそうな炎天下のプールサイド、千早ちゃんはビーチパラソルの影でクールに本を読んでいる。

「千早ちゃんは夏ってものが分かってないよ!」
「ごめんなさい。夏はあまり好きじゃないの」

 千早ちゃんはパタンと本を閉じ、ぼんやりとプールサイドに視線を遣った。

 そうだよ千早ちゃん!夏はこうでなきゃ!!
 夏といえば海!川!プール! 露店で売ってるかき氷!! ドラマティックな出会いの季節!!
 夏じゃなきゃ楽しめないことがいっぱいあるんだよ! ビーチボール片手に私はプールへ走り出した。
 

 なんか千早ちゃんが乗り気じゃなかった感じがするのは気のせいにしておく。





     真夏のフール





「おかえり、天海さん」
「……間違ってる。世の中根本的に間違ってるよ」

 ふらふらとプールサイドに戻った私は、千早ちゃんの隣に座り込む。
 流石に放っておくのは悪いと思ったのだろう、千早ちゃんは氷の入ったジュースを私に手渡した。
 水の中とはいえ、まだまだ夏は真っ盛りで。喉が渇いていた私はストローも使わず一気にジュースを飲み干した。
 
「千早ちゃん」
「なに」
「私達、アイドルだよね」
「不本意だけど、そうでしょうね」

 ノイズ混じりの屋外放送。海をモチーフにした大型プールからは黄色い声が波のように伝わってきた。
 浮輪やボートにつかまって楽しそうにおしゃべりするお兄さんお姉さん。
 やたら眩しく見えるのは、プールサイドが白いからということにしておく。
 濡れたタオルを顔にひっかけ、私はレジャーシートの上に寝転がった。おにぎりの海苔の匂いが小腹をくすぐる。

「仮にもアイドルなら、もう少し身の振りを考えた方がいいと思うわ」
「仮にもアイドルなら、もーちょっと注目されてもいいと思うんだよ」

 パラソルの陰にいるといってもここは真夏のプールサイドである。ぐんぐん上がる熱気に、何もしなくても汗がにじんでくる。
 仮にもアイドルなら、「あ、あれはあの超有名アイドル天海春香さんだ!」とか言ってプールサイドはたちまち握手会に!!
 嗚呼!!あのパーフェクトなスタイルと揺れるビキニ!!僕の心はもうキミに釘付けだ!! そう言って王子様は私をバカンスに誘う。
 ……なんてことはなかった。まぁ、現役アイドルといっても知名度が低ければただの女の子である。世の中はキビシイ。

「如月先生、トキメキの夏はどこにあるんでしょうか」
「自分で探した方がいいと思います」
「千早ちゃん!私たち水も滴る高校1年生だよ!!」
「……天海さんはそうかもしれないけど、私は泳いでもないし、汗もかいてないから」

 あのー、そういう意味で言ったんじゃないんですけど。そうはいうものの、正論すぎてぐぅの音も出ない。
 ごろりと寝返りを打ち、千早ちゃんの方を見る。この熱い中、千早ちゃんはパーカーを羽織って本を読んでいる。
 言葉通り、あまり汗をかかないのかもしれない。時折本を閉じては、ぼんやりと前を眺め、また本を開く。
 その視線はどこかさびしそうに見えた。
 初めて会ったときからどこか大人びてるとは思ってたけど、大人びてるっていうよりは哀愁?が漂ってる感じが正しいのかもしれない。
 それが何でなのかは私には分からないけど。とりあえず千早ちゃんはいつも物足りなさそうな顔をしていた。

「もしかして千早ちゃんってさ」

 千早ちゃんの肩が微かに引きつる。あー、やっぱりそうなんだ。

「泳げないの?」

 したり顔で尋ねると、千早ちゃんはものすごく気の抜けたような、呆れたような、そんな変な表情で私を見ていた。
 『お前は何を言ってるんだ』みたいな、そんな気持ちがその表情から嫌というくらいに見てとれる。
 いやだって、プールを見ながら寂しそうに眺める子っていったら、病気でプールに入れないんだとか、そう考えるのが普通だよね!!
 大丈夫!私達の年頃って、そういうどうでもいいことに無駄に真剣に悩んだりしちゃうってこと位分かってるから!

「……泳げるわよ」

 ため息交じりに顔を逸らされる。なんだ、面白くない。私は氷の融けた水99%のジュースを飲みながら、ストローの先を噛んだ。
 プールに誘ったのは無理やりだったし、千早ちゃんって無愛想な方だから、そう返されるのは仕方ないのかもしれないけど。
 泳げるんだったら泳げばいいのになって、そう思ってしまう。

 ……

 ……あーなるほど。はるかさんわかっちゃいましたよー!!
 これはいわゆる「本当は泳ぎたい。だけど、こんな年で水着ではしゃぐのは恥ずかしいから泳げるわけないわよ」ってことですね!!
 んもー、素直じゃないなぁ

 したり顔で千早ちゃんの顔を覗き込んだ。急に距離を詰められたからか、千早ちゃんは驚いた様子で私を見る。
 にやにやが抑えきれない私の顔は、さぞかし変だったに違いない。お得意の超クールな視線を頂いても、にやけが止まらない。
 押してもダメなら強行せよ。要は既成事実、覆水盆に返らず、である。
 ちょっと違うような気がするけれど、まぁこの際なんでもいい。私は千早ちゃんの手を握って引っ張り上げた。

「千早ちゃん!泳ごう!」
「なんで泳がないといけないのよ」
「大丈夫!一緒に泳げば恥ずかしくないよ!」

 イヤよイヤよもスキのうち。旅の恥はかきすて。千早ちゃんの重い足を引き摺りながら、私はプールに向かって進み出す。
 押し引き問答のしばらく後、千早ちゃんはようやく観念した。誘ったときもそうだったけど、千早ちゃんは押しにトコトン弱い。
 後ろ手に握った千早ちゃんの顔をちらりと見る。そこまで嫌そうじゃない(こういう顔のときは内心喜んでる)から、大丈夫だ。

「天海さんって」

 困ってるような、楽しんでるような。そんなヘンテコな顔をして、千早ちゃんは私に話しかけた。
 そういえば、千早ちゃんから何かを話しかけられるって、仕事関係以外ではあまりなかったような気がする。

「子供っぽいって、言われない?」
「……よく言われます…」
「やっぱり」

 千早ちゃんは笑った。弟か妹かを見ているような、そんなあったかい苦笑いだった。
 ……こんな笑顔、初めて見た。 反則だよ。思わず言葉を忘れる。
 いやー春香さんほれちまいそうだ。そんな笑顔、悪い虫に見せちゃいけません!お父さんは許しませんよ!!
 いやね、なんとなく分かってたけど、千早ちゃんって笑顔になると美人度がさらに上がるんだなぁって。

「天海さん?」
「ん?なんでもないよ?」
 
 だけど、それは言わないことにしておく。帰りの電車でそれをネタにしてからかってやるんだ。
 千早ちゃんの顔が真っ赤になる姿が容易に思い浮かんで、私ってこんなにイタズラ好きなんだって気付いて笑ってしまう。
 からかった後は、ものすごーく嫌そうな目つきで黙ってこちらを見てくるんだろうけど、まぁそれもよし。

 だって、そっちの方が楽しそうだし。そうした方が、友達っぽい感じがするし。
 なんといっても、夏休みなんだもん。
 

「あ」

 そんなことを考えていたら、踏み出した足の先がアスファルトじゃなくてプールだった。
 千早ちゃんが私を呼ぶ声がする。何故か時間がスローモーションをかけたように、宙に浮いた身体が水面との距離を縮める。
 淡い水色に染まったプールの水はとても涼しそうで、ああ数秒後には未来が始まるんだなぁって。あまり来てほしくないけど。

 お約束ですか、お約束ですね。それではみなさん御一緒に。






 <どんがらばっしゃーん!>


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