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まこちはSS書きました

2012年01月27日 02:04

お久し振りです。小六です。
まこちはSS書きました。感想も残っているのになんということでしょう。
まぁのんびりまったりやっていこうと思います。

そんなわけで、以下SSとなります。




 千早はバカだなぁ。彼女の話を聞いて、ボクはそう思った。
 「はぁ?」思わず呆れた声を出してしまう。千早は冷ややかな目つきでボクを睨む。
 そりゃあこんな声だって出したくもなる。「あなたの名前は何ですか、真」って聞かれてるようなものだから。
 もちろんボクの名前は真だし、千早はそんなことを聞いてはいない。だけど、それくらいにバカげた質問なのだ。
 それに付け加え、深刻な顔でそんなことを聞くものだから、なおさらタチが悪い。

「電話なんて、好きな時にすればいいんじゃないの?」
「答えになってないわ、真」 千早は口元に指を添える。「私が聞きたいのは、具体的なケースなのよ」
「いや、だからね、千早」
「頻繁にかけるのも迷惑でしょう?」探し物でもしてるみたいに視線を泳がせる。「だからといって全くかけないというのも悪いし」

 ああそうだね。千早ってそういう性格だよね。炭酸飲料をグラスに注ぎ、父さんがやってるみたいにちびりと口をつけた。
 炭酸の泡がグラスの中ではじけて、甘い匂いのする飛沫が口元についた。全く、やってられないよ。ボクはテレビに逃げ口を探す。
 液晶の中には春香が映っていて、それはそれは楽しそうに司会者の人に話をしていた。

『さて、来週から放送されるこのドラマですが、お話の魅力を教えてくれるかな?』
『そうですね。コミカルな感じですけど、年頃の女の子なら誰もが共感できるような、そんな内容です』
『なるほど。春香ちゃんはこういった経験、あるのかな?』
『えへへ、ナイショです』

 春香は茶目っ気たっぷりに質問をはぐらかした。放送は当たり障りもなく進行し、区切りのいいところでCMが入った。
 ボクと千早はキミのことで頭を抱えているっていうのに、ひな壇の中心で笑うなんて、いい身分だね。テレビを消すのも面倒くさくなる。
 テーブルにリモコンを置いて、お菓子を頬張った。ぱりぽり。美味しそうな音を立ててみると、痛いくらいに千早の視線を感じる。

「ああ、そういえばドラマの話だったね」
「違うわよ」



        火事ですか?救急ですか?




「こういうのって、苦手なの」携帯をいじりながら千早は話す。「おしゃべりはあまり得意ではないし」
「それに、わざわざ話す話題もないから?」
「そうね」 千早は眉間のしわを深めて笑った。「なんだかおかしいでしょう?」

 話すこともないのに話したいなんて、矛盾もいいところだわ。千早は軽く自嘲して、携帯をソファの上に置いた。
 午後の事務所はゆっくりとした時間が流れていて、思い出したように小鳥さんや律子が作業をする音が聞こえてくる。
 別におかしくないと思うけどな。ボクは身体を反らし、後ろの本棚から雑誌を取り出した。
 雑誌には流行りの服やお悩み相談なんかが書いてあって、その中でボク達は一丁前に笑っている。

「話題がないなら相手に聞けばいいんじゃないかな」
「春香に?」
「最近どう?とか、あるだろ」ボクは頁を繰りながら答える。「思ったことをそのまま話せばいいんだって」

 千早は眉間を更にけわしくさせて、携帯の画面を見つめていた。きっと話す内容を探しているんだろう。
 散々悩んだ挙句、出した言葉は「やっぱり難しいわ」。テーブルに携帯を投げ出し、千早はため息をついた。
 さすが、人づきあいが苦手だと自称するだけはある。ボクは千早の携帯を取り、春香に電話をかけた。

「春香?真だけど」突然の出来事に千早の目が丸くなる。「ごめんごめん。千早がちょっとお喋りしたいんだってさ」

 ボクは千早に携帯を差し出す。なにしてるのよ、もう。ボクを糺す千早の声は小さい。
 千早はおずおずと携帯を受け取り、春香に話し始めた。
 
「もしもし、春香」
「あなたに話をしようと思うのだけれど、何を話したらいいかしら?」

 思わず飲んでいたものを噴き出しそうになった。さすが千早、ド直球にもほどがある。
 後ろの方では、律子が笑いを堪えているのが分かった。ホント、何の罰ゲームだよ。
 むせた喉を治そうと、ボクは軽く咳払いをした。千早の電話はなおも続く。

「ううん。思ったことをそのまま話せばいいって、さっき真が」
「真?ええ、今そこにいるけれど」

 千早がちらりとボクを見遣る。ああ、面倒なことになりそうな気がする。ボクは肩を盛大に落とし、千早の様子を見守った。
 幾度かのやりとりの後、「ええ、それじゃあまた」と何やら消化不良といった顔をして、電話を切った。
 ほどなくして、ボクの携帯が震えた。誰からなんて確認したくもない。電話を受けると、案の定春香の声が聞こえた。

「真!千早ちゃんにね!!寝るときはどんな服着てるのって!」
「自分で聞けよ!!」

 ボクは通話を切り、大きくため息をつく。とうとう堪え切れなくなったのか、律子は机を叩いていた。
 ひぃひぃと笑いをこらえる声が後ろから聞こえた。ああもう、こっちの身にもなってくれよ。ひどい徒労感に襲われる。
 千早といえばこの状況を理解できていないようで、不思議そうな顔をしてボクの方を見ていた。

「ああ、うん。春香がね、『さっきのテレビの感想とか、聞いてみたいなぁ』って」
「それだけ?」
「うん。それだけ」

 実際は少し違うけど。これくらいが丁度いいって、ボクは思う。千早は腑に落ちないといった様子で首を傾げた。
 本当にそんなことでいいの?そう言いたげにボクを見る。それが何故かとても面白くて、ボクは笑ってしまう。
 そんなに笑わないでよ。ボクの様子を見た千早は、拗ねてそっぽを向いた。ごめんごめんとボクは腹をかかえる。

「そんなもんだって」

 本当、千早は面白い。普通じゃ出来ないことをさらりとやってみせるくせに、普通すぎることに真剣に悩んじゃうんだから。
 そこが千早ちゃんのカワイイところなんだよ!と春香は言うけれど、ボクからすればシュールなコントにしか見えない。
 本当、千早の考え方はめちゃくちゃだ。それが千早なんだってことも分かっているけれど。ねぇ?
 救急車を呼ぶような顔つきで、友達に電話をかけるだなんて。ねぇ千早、それじゃまるでボク達が救急患者みたいだ。
 ボクは笑いを収めて、千早に尋ねる。

「千早はさ、春香から電話があったら嬉しい?」
「退屈はしないわね」 
「それなら大丈夫だよ」

 意味が分からないとばかりに千早は眉を寄せたので、ボクはまた笑ってしまった。
 嬉しいなら嬉しいって、素直に言えばいいのに。春香が退屈するわけないって、そんなのボクでも分かるのに。
 流石に機嫌を損ねたのか、千早はそっぽを向いてだんまりを決め込んだ。お決まりのパターンである。
 それからしばらくボクは千早の機嫌を直すハメになり、彼女の機嫌が直った頃には、千早が出かける時間になっていた。

「それじゃ真、今日はありがとう」
「後で春香によろしく言っといて」「ああ、そういえば」
「そういえば?」
「その服カワイイね。どこで買ったの?」

 千早は居心地が悪そうに襟をつまんで「この間、春香と遊びに行った時にね」と苦笑した。
 そう言って千早は事務所を後にした。翻るコートの裾はどう見ても千早の趣味じゃなかったけれど、とても似合っていた。
 千早を見送った後、ボクはぐったりとソファに背を預け、後ろにいる律子に声をかけた。

「ねぇ、律子」
「なに?」

 春香のことだ。千早との電話に夢中になって、うっかり千早の電話代を冗談みたいに跳ね上げてしまうんだろう。
 そしたら千早は通話プランを変えて、そのまま携帯も変えて、絵文字つきのメールを送れるようになったりして。

「千早って、本当にバカだよね」

 可愛らしいストラップを押し付けられてさ。まんざらでもないからそれをつけて、気付いたらそれが普通になって。
 亜美達にからかわれて、真っ赤になって言い訳して、伊織に呆れられて、ボクや雪歩に相談して。
 ねぇ千早。それはとってもめんどくさいけれど、そうなることって、そんなに悪くないって思うんだ。

「それじゃあきっと、私と真は物好きね」
「違いない」 

 そう答えて、ボクは堪えていた笑いをどっと吐き出した。



 <了> 



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